本研究では、2次元走査型角度分解光電子マッピング測定システムにおいて、励起光である真空紫外放射光とレーザー高調波の偏光制御性と測定系を高度化することにより、放射光とレーザーを励起光とした線および円2色角度分解光電子分光における新規な2次元バンドマッピング手法を確立し、従来法では高エネルギー分解能且つ高効率での実験が困難なために軌道・スピン依存2次元バンド構造の解明が困難である物質系についても適用可能な、特異なスピン依存表面電子状態を有する物質の軌道およびスピン分解での2次元バンド分散を明らかにするための測定手法を実証する。さらに、ポンププローブ時間分解測定により、軌道・スピン分解表面電子構造のダイナミクス研究へ展開することを目的とする。 今年度は、昨年度の実施により可能となった、左右円偏光を任意に切り替えながら長時間計測システムを用いて、円2色ARPES測定において特有の2色性を示すことを見出されたSi(111)上のBi(111)単結晶薄膜の表面電子状態について、詳細に明らかにすることを目的として、広波数範囲において試料面内方位角も制御しながら円2色ARPESマッピングの測定を行った。その結果、表面状態のARPESマッピングではバルク結晶の3回対称性も反映した円2色コントラストを示すことや、S2状態では従来報告のなかった特異なコントラストを示すことなど、新規な知見を得ることができた。
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