研究実績の概要 |
近年、レーザー科学の進展によって高輝度レーザーの集光度が高くなり、レーザープラズマからガンマ線や粒子の生成が可能になっている。このような高輝度レーザーで生成された量子ビームを用いて、原子核物理学・宇宙核物理学研究が可能になっている。特にレーザー駆動ガンマ線の場合には、従来の加速器ベースのガンマ線と比較して、極短パルス・連続エネルギー等の特徴を有する。実験の観点からは、パルス的に生成されるガンマ線のエネルギースペクトルの評価が重要である。従来の実験技術では困難であり、高輝度高繰り返しレーザーに対応するためには、短い時間(数分程度)で解析がすむ新しいガンマ線スペクトルの評価方法が望まれている。そこで、放射化カウンタを提案し、シンチレーター検出器を作成した。爆発的な放射線発生の場合、個々の事象を分けることは困難であり、放射化法と呼ばれる手法が広く使われていた。放射化法では放射線照射によって起因する核反応で生成された放射性同位体ないしアイソマーを照射後に計測することで、照射された放射線の量を評価する。放射化法をより短時間で計測するために、放射化カウンタを提案した。放射化カウンタは、例えばDT核融合など、爆発的な事象で多少の中性子が発生する場合に用いられた例はあるが、ガンマ線に対しては調べた範囲では例を見つけることができなかった。また、シミュレーションによる量子ビーム生成を研究した。放射化の対象となる物質については、現在の候補以外にも候補があるので、検討をすすめた。また、Phitsシミュレーションを用いて大強度レーザーで爆発的に発生するガンマ線による(γ,n)反応率を評価した。その結果、巨大双極子共鳴(GDR)のピークに主に反応率が依存し、中性子離別エネルギーより重要性が高いことが判明した。合わて、同時に発生する中性子のエネルギースペクトルについても評価をすすめた。
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