研究課題/領域番号 |
16K13732
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 峰 国立研究開発法人理化学研究所, 東原子分子物理研究室, 専任研究員 (20360547)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘリウムイオン顕微鏡 / 単電子トランジスタ / 鉄ナノワイヤ / 許容電流密度 / クーロンブロッケイド |
研究実績の概要 |
ナノワイヤの応用(単電子トランジスタ化)を見据えて、前駆体として鉄カルボニールガスを用いて電子ビーム誘起デポジションで作製した鉄ナノワイヤの許容電流密度(電気特性)をヘリウムイオン顕微鏡内でスイープ電流を増加させながら繰り返し電流・電圧特性を測定することによって求めた。ナノワイヤがブレークダウンする直前に流れた電流値は217μAであった。ナノワイヤのブレークダウンの理由はナノワイヤがブレークダウンした直後のヘリウムイオン顕微鏡の観察から、ナノワイヤの溶融と考えられる。また、単位断面積あたりの許容電流を計算するためにはナノワイヤの断面積の情報が必要になることから、原子間力顕微鏡によってナノワイヤの形状及びナノワイヤの高さを計測した。その結果、電子ビーム誘起デポジションで作製したナノワイヤの断面形状はガウシアン及び高さは16.9nmであることがわかった。また、ナノワイヤの幅に関しての情報はヘリウムイオン顕微鏡の観察によって求めた。その結果、ナノワイヤの幅は11.0nmと求められた。以上のことから、鉄ナノワイヤの単位面積あたりの許容電流は4.7e7[A/cm2]とかなり大きな値であることがわかった。 さらに、鉄ナノワイヤをヘリウムイオン顕微鏡によって単電子トランジスタ構造を作製し、室温で電流ー電圧特性を測定した結果、クーロンブロッケードと考えられる電流ー電圧曲線が観察された。 上記の結果から電子ビーム誘起デポジションで作製したナノワイヤを用いて単電子トランジスタを作製できる可能性が十分にあると考えらる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
物質・材料研究機構のヘリウムイオン顕微鏡が昨年1月から11月まで故障していた。及び、ヘリウムイオン顕微鏡の加工の再現性は照射量の制御で非常によいものと考えられていたが、ビーム径が毎回違っていることから、再現性よく加工することが難しい。
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今後の研究の推進方策 |
物質・材料研究機構のヘリウムイオン顕微鏡の修理が終わったことから、利用可能となった。 また、ナノワイヤをin-situで電気特性を調べつつ加工を行う方策をとることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
国立研究開発法人物質・材料研究機構のヘリウムイオン顕微鏡が平成28年4月(詳しくは平成28年1月)より11月まで故障のためヘリウムイオン顕微鏡の使用ができなかった。そのため、ガスインジェクションシステムを用いてナノワイヤの作製が遅れた。それによりヘリウムイオン顕微鏡のヘリウムイオンビームあるいはネオンイオンビームを用いてナノワイヤに障壁を製作できなかったことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
国立研究開発法人物質・材料研究機構のヘリウムイオン顕微鏡の故障も平成28年11月より直ったことから、できるだけ次年度に単電子トランジスタ作製を試みる。時間が不足した場合、動作温度の高温化の研究は次期計画とすることも考える。
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