研究課題/領域番号 |
16K13732
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 峰 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子制御技術開発チーム, 特別嘱託職員 (20360547)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヘリウムイオン顕微鏡 / ナノデバイス / SiNメンブレン / 単電子トランジスタ |
研究実績の概要 |
初年度、SiO2/Si基板を用いて、イオンビーム誘起デポジションで作製したナノワイヤをヘリウムイオン顕微鏡を用いてヘリウムイオンビームで照射により加工した場合、SiO2/Si基板中にヘリウムバブルが形成され、ナノワイヤの同一位置を照射できない現象が生じた。そのため、加工が狙いどおりにできない状況に陥った。その解決策として、次年度、ヘリウムイオン照射によって顕著なヘリウムバルブを形成しないサファイア基板を用いたが、サファイア基板の絶縁性の高さから、ヘリウムイオンビーム照射によるチャージアップに伴うビームシフトが起こり、サファイア基板上のナノワイヤも再現性よく加工できないことを確認した。 そこで、上記の問題点を解決するため、SiN薄膜(メンブレン)を用いることを発想した。その理由はSiN基板の場合、30keVのヘリウムイオンビームの照射した場合、50nm以下のメンブレンであれば、ほとんどの入射粒子はメンブレンを貫通して、ヘリウムバブルを形成しない。および、SiN薄膜基板の絶縁性がサファイヤほどでない。 本年度、次の項目の実験を行った。(1) SiN薄膜基板を作製、(2) SiN薄膜基板をヘリウムイオン顕微鏡で観察、(3) SiN薄膜基板上にイオンビーム誘起堆積によってナノワイヤを形成、(4) SiN薄膜基板上のナノワイヤをヘリウムイオン顕微鏡で観察を行った。 その結果、ナノワイヤを作製する前の基板をヘリウムイオン顕微鏡で観察可能であること、50nmの厚さのSiN薄膜基板上にW(C)ナノワイヤを作製可能であること、かつナノワイヤを作製した後でもヘリウムイオン顕微鏡で観察可能であることを確認した。また、ナノワイヤ作製時及び観察時にチャージアップによるビームシフトは観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度、SiO2/Si基板を用いて、イオンビーム誘起デポジションで作製したナノワイヤをヘリウムイオン顕微鏡を用いてヘリウムイオンビームで照射により加工した場合、SiO2/Si基板中にヘリウムバブルが形成され、ナノワイヤの同一位置を照射できない現象が生じた。そのため、加工が狙いどおりにできない状況に陥った。その解決策として、次年度、ヘリウムイオン照射によって顕著なヘリウムバルブを形成しないサファイア基板を用いたが、サファイア基板の絶縁性の高さから、ヘリウムイオンビーム照射によるチャージアップに伴うビームシフトが起こり、サファイア基板上のナノワイヤも再現性よく加工できないことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
SiN薄膜基板の可能性を実証するために、次の項目の実験を行った。(1) SiN薄膜基板を作製、(2) SiN薄膜基板をヘリウムイオン顕微鏡で観察、(3) SiN薄膜基板上にイオンビーム誘起堆積によってナノワイヤを形成、(4) SiN薄膜基板上のナノワイヤをヘリウムイオン顕微鏡で観察を行った。 その結果、ナノワイヤを作製する前の基板をヘリウムイオン顕微鏡で観察可能であること、50nmの厚さのSiN薄膜基板上にW(C)ナノワイヤを作製可能であること、かつナノワイヤを作製した後でもヘリウムイオン顕微鏡で観察可能であることを確認した。また、ナノワイヤ作製時及び観察時にチャージアップによるビームシフトは観察されなかった。このことから、SiN薄膜基板を用いて単電子トランジスタの開発できる可能性が高まった。 今後、ヘリウムイオン顕微鏡内でin-situで電気特性(抵抗)を測定しつつ、ヘリウムイオンビームを照射し、所望の位置に再現性良く単電子トランジスタを作製することを試みる。平成30年度に、未使用額を(1) ヘリウムイオン顕微鏡使用料金、(2) ヘリウムイオン顕微鏡施設への旅費、(3) 基板作製に使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
SiN薄膜基板(メンブレン)の使用の発想に至るまでに時間を要したため。
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