200nmの厚さの窒化シリコン薄膜(メンブレン)上にヘリウムイオン顕微鏡により(1)ソース・ドレン細線(ナノワイヤ)を形成できること、(2)その細線をヘリウムイオン顕微鏡で加工することで(細線の二カ所をヘリウムイオン照射により切断することで)クーロン島形状を形成できることを確認した。その後、ソース・ドレン細線の電流電圧特性を調べたところ、昨年度まで形成できていた金属的細線ができないことがわかった(形成された細線は絶縁体であった)。その原因はプレカーサーガスのガス切れと考えられる。そのため、ヘリウムイオン顕微鏡の所有・管理を行っている機関にタングステンカルボニール[W(CO)6]の詰め替えを依頼したが、その機関から詰め替えができない趣旨の回答があり、その機関での細線の形成を断念した。また、国内にはヘリウムイオン顕微鏡を保有する機関がその他に2機関あることから、その2機関にタングステン細線の形成ができないか打診した結果、どちらの機関も形成できないことがわかった(一方の機関はタングステン細線形成に未対応、もう一方の機関はガスインジェクションシステム故障中)。そのため、アメリカのヘリウムイオン顕微鏡の製作販売会社にタングステン細線の形成を打診したが、細線を形成するサービスを行っていないとの回答を得た。そのため、研究実施計画の大幅な変更をせざるを得なかった。 形成できる細線の太さがヘリウムイオン顕微鏡ほど細くはないものの所望の位置にタングステン細線を形成できるFIB(集束イオンビーム)により細線を作製し、その細線の電流・電圧特性、及び超伝導特性を測定した。電流・電圧特性はヘリウムイオン顕微鏡で形成した細線とほぼ同様であること、および転移温度が約4.7Kであることがわかった。
|