シンクロトロン放射光CTは金属組織や材料欠陥を可視化でき、シミュレーションと連携した材料強度の評価や予測への応用が期待されている。しかしデータ量が膨大で、金属組織が複雑過ぎるため、解析に必要な有限要素モデル(メッシュ)の作成が容易ではない。本研究では、画素を要素に置換するだけで確実にメッシュが生成でき、並列化のための領域分割も容易なボクセル要素の適用を検討した。解析対象はアルミニウム鋳造合金とし、過去に撮像した放射光CT画像を使用した。 平成28年度は、放射光CT画像からメッシュを自動生成し、並列計算用の領域分割も同時に実行するプログラムを開発した。有限要素解析にはオープンソースコードFrontISTRを用い、弾塑性解析用の材料モデルを新たに追加した。並列計算には、東京大学FX10(HPCI課題番号hp160055)および九州大学FX10(有償)を使用した。解析結果の可視化には、大阪大学VCC(有償)を使用した。この検討から、約1.7億要素の大規模並列弾塑性解析に成功した。 平成29年度は、ボクセル要素の解析精度向上のため、要素の積分点毎に材料特性を変えられる非均質要素をFrontISTRに実装した。並列計算には、スーパーコンピュータ「京」(HPCI課題番号hp170188)を用い、前年度に使用したFrontISTRを移植して使用した。結果の可視化は前年度と同様に大阪大学(HPCI課題番号hp170188)で実施した。精度検証の結果、非均質要素は通常の均質要素に比べて、応力集中をより正確に表現できるものの、応力勾配が高くなると、ボクセル要素特有の応力の波打ちが強くなることが判明した。一方、大規模解析に関しては、約1.5億要素のモデルにより10サイクルの疲労解析に成功した。これにより、実際の試験片の表面の影響や、アルミ粒子の形状の影響を世界で初めて定量的に評価した。
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