研究課題/領域番号 |
16K13738
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小木曽 望 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70295715)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統計的不確定性 / 信頼性 / 最適設計 / 信用区間 / 見える化 |
研究実績の概要 |
本研究は,統計的不確定性と物理的不確定性を統合して,最適設計解を区間推定することを主要テーマとして取り組んだ. まず,28年度は,計画として,① 「統計的不確定性の高精度推定手法の開発」,② 「複雑なシステム設計問題における信頼性に基づく最適設計法の定式化」,③ 「統計的不確定性と物理的不確定性を統合する指標の構築」を掲げていた.このうち,①と②に対しては,第一段階として分布形を仮定した場合の数学的な例題に対する解法として,統計的不確定性を考慮した信頼性に基づく多目的最適設計として投稿論文として発表することができた.③については,物理的不確定性に対する信頼性に基づく最適設計解に対して,情報量の不確定性がどのような影響を及ぼすかを定式化し,情報量の不確定性に関してロバストな設計解を求める方法を提案し,基本的な数学的な例題に対して学会発表を行うことができた. 一方で,当初,予定していた「ある程度大規模で複雑な設計問題」への展開が不十分となった.これは,当初予定していたモデル化では不十分であり,以下の2点の影響を考慮することの必要性を明らかになったからである.まず,1点は,本研究の比較対象となる従来手法である同定法(モデル入力の不確定性に対する応答の不確定性を同定する方法)のプログラム開発が必要となったこと,もう1点は実験回数あるいはサンプル数が少なくて分布形が仮定できない場合への拡張を行うことが必要となることである.これらを計画に追加して,取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の報告概要にも示したように,「ある程度大規模で複雑な設計問題」への展開について,新たに追加が必要な課題が明らかとなった.それに取り組む必要があるために,遅れが生じている.特に,同定については,データ同化手法として有用なアンサンブルカルマンフィルターあるいは粒子フィルターを導入する.また,この同定手法により推定された応答値のばらつきをモデル化するための効率的な手法の定式化に時間を要したことが主な遅れの原因となっている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,28年度に残した② 「複雑なシステム設計問題における信頼性に基づく最適設計法の定式化」を早急に進める.そして,④「不確定性と最適設計解の信頼区間とのトレードオフ情報を見える化する指標」を構築する. そして,平成29年度後半に,⑤「宇宙構造システムの設計問題に適用して,提案手法の妥当性を検証」する. ④「不確定性と最適設計解の信頼区間とのトレードオフ情報を見える化する指標の構築」 - 平成28年度の③で構築した最適設計解の信頼区間が不確定性によってどのように変化するのかのトレードオフを明確にする.そのために,この問題を多目的最適設計問題として定式化する.具体的には,不確定性,信用区間,さらに信用区間の不確定性に関する感度情報を目的関数として多目的最適設計問題を解き,そのトレードオフ情報を可視化する. なお,多目的最適化の解法としては,満足化トレードオフ法を組み合わせた手法を利用することを考えている. そして,そこからトレードオフに有効な指標を構築する. ⑤「宇宙構造システムの設計問題に適用して提案手法の妥当性検証」 - ①,③,④で構築した「トレードオフ情情報を見える化する指標」を②で定式化した宇宙構造システムの設計問題に適用して,その妥当性を調査する.研究の遅れを取り戻すために,設計問題の規模を縮小し,提案手法の妥当性の検証に絞ることにする.その内容としては, (A) 統計的不確定性の影響が,指標を通してどこまで正確に記述できているかを明らかにする. (B) 最適設計解における性能と不確定性のトレードオフを示す指標として,従来の「感度解析」に対する有効性を明らかにする. また,この構築した指標が有効な範囲を明らかにする. 最後に,研究総括として本研究の有効性を明らかにする.そして,提案した方法を別の設計問題に適用するために必要な改善項目や課題を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予算額140万円に対して,残額が11282円と1%以下であり,ほぼ予定通りの支出であった.残額が生じたことに特別の理由はない.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費で利用する.
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