研究課題/領域番号 |
16K13741
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉永 正彦 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90467647)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オイラー標数 / 圏化 / マグニチュード / マグニチュードホモロジー |
研究実績の概要 |
2017年度は、当初から準備していた、順序多項式、彩色多項式、流れ多項式の組み合わせ論的相互律のオイラー標数版に関する論文(長谷部氏、宮谷氏との共著論文)が出版に至った。またこの論文の結果について、九州大学と京都大学の談話会で講演を行った。 オイラー標数を「有限集合の位数」の一般化とみなすというアイデアは、古くから様々な方面で考えられている。そのうちの一つに、圏のnerveのオイラー標数を一般化した、豊穣圏や距離空間のマグニチュードと呼ばれる概念がLeinsterにより2013年頃提唱されて研究されている。このマグニチュードの圏化が何かというのは、以前から問題にされており、Hepworth-Willertonによりグラフに対するマグニチュードホモロジーが提唱されていた。2017年11月にLeinsterとShulmanにより、豊穣圏や距離空間のマグニチュードの圏化とみなされる「マグニチュードホモロジー」に関するプレプリントが公開されたのをきっかけに、マグニチュードホモロジーの研究を開始した(金田龍貴氏との共同研究)。距離空間上の区間に自然に入る順序構造に注目すると、本研究計画で注目していた、順序複体の概念がマグニチュードホモロジーの計算に使えることが分かった。その応用として、射影平面の三角形分割の面ポセットに最大限と最小限を付け加えた順序集合のハッセ図を距離空間とみなした時、そのマグニチュードホモロジーがねじれを持つことを示した。これはLeinster-Shulmanやそれ以前のHepworth-Willertonの論文で挙げられている問題に対する解答を与えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
半代数的ポセットなど半代数的集合のオイラー標数を使った研究は、この一年間実質的な進展はなかった。また本研究計画の出発点となった、彩色多項式の圏化に関する投稿中の論文に対する査読レポートが、好意的な面もあるものの、大幅な書き換えを要するもので、その作業をする時間が取れなかった。以上をもって当初の計画から比べると遅れていると判断している。 一方で、当初は予期していなかったが、本計画で注目していた順序集合とトポロジーの相互関係に関する知見が、マグニチュードホモロジーに応用できることがわかり、短期間でプレプリントを公表することができた点は、想定外の方向ではあるが前向きに評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にはなかったが、マグニチュードホモロジーやその周辺は、本計画の「数え上げ問題を圏論的な視点から調べる」というアイデアの枠内にあり、かつこれまでも注目していた順序集合の位相的な研究と密接に関わる。金田氏との共著論文が出た数週間後に、近いアイデアのプレプリントが公表されるなど、潜在的に多くの研究者が注目しているテーマである。成果をあげるタイミングを逃すことのないよう、短期的には、マグニチュードホモロジー周辺で、研究をできる限り進めるのが良いと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の節約ができたため、若干の繰り越しをすることになった。 マグニチュードホモロジーというこれまで関わりの少なかった対象を扱う必要が出てきたため、関連文献の購入費用に充てることを考えている。
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