研究実績の概要 |
パリ大学のJ. Nekovar氏とケンブリッジ大学のA. Scholl氏によって提起されたプレクティック予想は, 実乗法をもつモチーフの研究に革新的影響を及ぼすものと期待されている. そしてこの予想が解決すると、総実体上の整数論の未解決問題への応用(例えばStark予想、加藤Euler系の総実体上への一般化など)が期待されている. しかしながらこの予想は実際には基本的なことを含めて多くのことが未解決である. 本研究ではプレクティック構造のHodge実現に焦点をあてて研究を行った. 昨年度に引き続き混合プレクティックHodge構造の圏の整備を行なった. 具体的には、この圏をweight filtrationと多重Hodge filtrationの言葉で記述することに成功した. またこの圏のextension groupを計算する明示的な複体を構成することに成功した. これは総実体のL-関数の特殊値とプレクティック構造との関係を調べるなど、整数論の問題への具体的応用を考える上で非常に重要である. 今年度はこの成果を経て、具体的な応用への道筋をつけるべく, 総実体のL-関数の特殊値, プレクティック構造, 新谷の方法の3つの関係を明らかにする研究を行った. 具体的な成果は分数イデアルに付随する空間の商スタックのコホモロジーと特殊値を結びつけるために、まず特殊値の反復積分表示を考察した.その結果,新谷の方法により,この空間の有理微分形式から出発して多重積分を反復することで目的の特殊値が表されることが分かった.
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