研究課題/領域番号 |
16K13743
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
植田 一石 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (60432465)
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研究分担者 |
毛利 出 静岡大学, 理学部, 教授 (50436903)
大川 新之介 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60646909)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非可換代数幾何学 / 導来圏 / 代数多様体のGrothendieck環 |
研究実績の概要 |
King's College LondonのYanki Lekili氏と共同で、与えられた次数付き代数に入るA-infinity構造のモジュライ空間に関する研究を行った。これは、大阪大学の大川新之介氏や静岡大学の毛利出氏、それにニューサウスウェールズ大学のTarig Abdelgadir氏らと行っている、与えられた箙に入る関係式のモジュライ空間の研究の自然な拡張になっており、非可換代数多様体のモジュライ空間を調べる重要な道具になると期待される。
また、大川新之介氏と名古屋大学多元数理科学研究科の伊藤敦氏、それに韓国高等科学院の三浦真人氏と共同で行っている代数多様体のGrothendieck環の構造に関する研究を継続した。2つの代数多様体XとYの連接層の導来圏が同値であるとき、XとYはD同値であると言う。また、代数多様体のGrothendieck環におけるアファイン直線のクラスをLと置く時、代数多様体XとYのクラスの差[X]-[Y]にLの適当な冪を掛けると0になる時、XとYはL同値であると言う。BorisovやMartin、それに伊藤-植田-大川-三浦の研究を受けて、XとYがD同値であるときL同値であるかという問いが伊藤-植田-大川-三浦とKuznetsov-Shinderによって独立に提唱されたが、次元が2以上の一般のAbel多様体がこの問いに対する否定的な答えを与える事を示した。また、Efimovも同時期に独立に同様の結果を得ている。さらに、研究分担者の大川新之介氏によって、K3曲面上の点のHilbertスキームを用いて、D同値かつL同値で、しかも双有理同値でない代数多様体の例が、いくらでも高い次元で存在する事が示された。Meachan、Mongardi及び吉岡康太氏も同時期に独立に類似の結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数多様体のGrothendieck環の構造に関する研究は順調に進展し、その成果はプレプリントとして公表された。また、まだ論文の公表には至っていないが、箙の関係式のモジュライ空間や非可換Hirzebruch曲面のモジュライ空間、A-infinity空間のモジュライ空間などに関する研究も順調に進展しており、複数の論文を準備中である。
さらに、本研究費を使用して、海外から11名の講演者を招聘してRIMS研究集会「非可換代数幾何学とその周辺」を行い、そこでこれまでに得られた研究成果を発表するとともに、本研究課題推進のための多くの情報を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
非可換代数多様体のモジュライ空間についてこれまでに得られた成果を論文としてまとめ、公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RIMS研究集会"Noncommutative Algebraic Geometry and Related Topics"において、当初予定していた講演者に辞退者が出たので、次年度に招聘旅費および研究打ち合わせ旅費として使用する。
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