研究課題/領域番号 |
16K13749
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
島田 伊知朗 広島大学, 理学研究科, 教授 (10235616)
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研究分担者 |
木村 俊一 広島大学, 理学研究科, 教授 (10284150)
奥田 隆幸 広島大学, 理学研究科, 講師 (40725131)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 格子 / 符号 / コンフィギュレーション |
研究実績の概要 |
充填密度の高い格子を,格子の重要な不変量である discriminant 形式を用いて構成する方法に関するいくつかの実験を行った.特に,位数35の有限環上の長さ32の符号から階数が64の extremal 格子(すなわち最小ノルムが6の正定値 even unimodular 格子)を構成し,その自己同型群を決定した.長さ32の符号は,位数31の有限体上の射影直線上のquadratic residue 符号を一般化して得られるものであり,得られた格子の自己同型群はこの符号の自己同型群を指数2の部分群として含む.この結果は論文としてすでに出版済みである.最小ノルムが6であることを証明するために複数のCPUをもちいた分散計算を行ったが,論文発表後,東北大学情報科学研究科の原田昌晃氏により直接の計算でも確かめられた. W. L. Edgeが1970年の論文で示唆した,標数2の4次元3次 Fermat 多様体に含まれる平面の集合と,Leech 格子の与えられた正三角形(辺の長さは2)を含む正四面体の集合との間の対応を明示的に記述した.応用として,階数22の圧着格子の自己同型群を計算した.この結果は論文としてすでに出版済みである. 複素数体上定義されたレベル4の楕円モジュラー曲面の自己同型群が標数3における還元のもとでどのように変化するのかを調べた.レベル4の楕円モジュラー曲面の非特異有理曲線のコンフィギュレーションとIV型エンリケス曲面上の非特異有理曲線のコンフィギュレーションが,Petersen グラフを介してどのようにつながっているかを明示的に記述した.この結果については現在論文を執筆中である. 2018年3月に,この研究費を用いて研究集会 Branched Coverings, Degenerations, and Related Topics 2018を開催した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
階数が64のextremal格子については,Nebe-Sloane による A Catalogue of Lattices(http://www.math.rwth-aachen.de/~Gabriele.Nebe/LATTICES/)に記載されていた64の extremal 格子とは同型でないことが証明できたので,新たにこのカタログに記載してもらうことができた. W. L. Edge により,その存在が曖昧な形で示唆されていた対応関係については,計算機を用いることで存在を証明することができ,Conway の与えた dot 222とPSU(6, 4)の間の同型を書き下すことにも成功した. 2017年12月に開催された研究集会において,標数3の4次Fermat曲面の自己同型群の計算結果(Kondo and Shimada, 2014)を用いて標数3のIV型エンリケス曲面(Martin 2017)を構成する方法を発表し,IV型エンリケス曲面上の非特異有理曲線のコンフィギュレーションが Petersen グラフの2重被覆となっているという観察を報告したところ,レベル4の楕円モジュラー曲面との関係を何人かの方から指摘されたため,この曲面の自己同型群の計算(Keum and Kondo, 2001)を,標数3の4次Fermat曲面の自己同型群の計算と compatible になる形で最初からやりなおした.さらに,剰余体の標数が3の混標数離散附値環 R 上のレベル4の楕円モジュラー曲面の smooth なモデルが構成できるが,このモデルの R 上の自己同型群の決定も視野に入れ,論文を全面的に書き換えることとなった.そのため,研究実績概要の3番目の段落に記述した研究内容については,現在改良の途上にありまだ完成には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
Rを剰余体の標数が3の混標数離散附値環とする.レベル4の楕円モジュラー曲面のR上の smooth なモデルのR上の自己同型群を決定し,複素数体上および剰余体上の自己同型群と比較する.これらの結果について論文にまとめ,計算データ(たとえば,自己同型群の生成元のネロン・セヴェリ格子上への作用を記述する行列,自己同型群の基本領域,など)を研究代表者のweb-page上に公開する.さらに,標数3の4次 Fermat 曲面を標数0に持ち上げることで,レベル4の楕円モジュラー曲面以外にもいくつかの特異K3曲面が得られるが,これらのK3曲面の自己同型群を決定する.標数3の4次Fermat 曲面上の直線のコンフィギュレーションの部分コンフィギュレーションとして得られるこれらの特異K3曲面の非特異有理曲線のコンフィギュレーションについて研究を進め,正標数の超特異K3曲面上の有理曲線のコンフィギュレーションの標数0への持ち上げに関し,一般論を構築するための手がかりを見つける. レベル4の楕円モジュラー曲面から自然に得られる非特異有理曲線のコンフィギュレーションは Petersen グラフの4重被覆となっており,大きな自己同型群をもっている.Petersen グラフの4重被覆として,上のグラフとは同型ではないが,同じ位数の自己同型群をもつグラフも現れることがわかっている.そこでPetersenグラフ,Hoffman-Singletonグラフ,あるいは Higman-Sims グラフなど対称性の高いグラフの有限被覆として得られるグラフの自己同型群について,実験的研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年12月に開催された研究集会において,標数3の4次 Fermat 曲面の自己同型群の計算結果(Kondo and Shimada, 2014)を用いて標数3のIV型エンリケス曲面(Martin 2017)を構成する方法を発表しIV型エンリケス曲面上の非特異有理曲線のコンフィギュレーションが Petersen グラフの2重被覆となっているという観察を報告したところ,レベル4の楕円モジュラー曲面との関係を何人かの方から指摘されたため,この曲面の自己同型群の計算(Keum and Kondo, 2001)を,標数3の4次 Fermat 曲面の自己同型群の計算と compatible になる形で最初からやりなおした. Rを剰余体の標数が3の混標数離散附値環とする.レベル4の楕円モジュラー曲面のR上の smooth なモデルのR上の自己同型群を決定し,複素数体上および剰余体上の自己同型群と比較する.これらの結果について論文にまとめ,計算データを研究代表者の web-page 上に公開する.次年度使用額は離散附値環上の代数多様体の自己同型群に関する情報収集および成果発表に用いる.
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