研究課題/領域番号 |
16K13751
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
下川 航也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60312633)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリマー / エントロピー / 結び目 |
研究実績の概要 |
この研究では、希薄溶液内のDNAやタンパク質などの環状高分子のモデルとして考察される、立方格子に埋め込まれた結び目(格子結び目)について、そのトポロジーに関する研究とと統計力学的エントロピーに相当する指数関数的増大度の研究を行っている。ここで考える格子結び目は、3次元ユークリッド空間において全ての座標が整数である有限個の点とそれらの点を結ぶ長さが1の辺有限個で構成される結び目、絡み目である。 今年度の研究では、石原海氏、Chris Soteros氏とともに、チューブ状領域内の格子結び目、絡み目に着目し研究を行った。これまでの準備的な研究で、与えられた(m x n)-チューブ状領域内で実現できる結び目型、絡み目型の特徴付けている。さらに、(2 x 1)-チューブ内の結び目解消数1の結び目は、自明な結び目と同じ指数関数的増大度を持つことを示している。今回の研究で、(2 x 1)-チューブ内の任意の結び目、および、任意の非分離絡み目は同じ指数関数的増大度を持つことを示すことが出来た。その方法は、(2 x 1)-チューブ内の結び目や絡み目は2橋結び目の連結和、非交差和で得られることを用い、交差交換やバンド手術がどの様に4-プラット表示で配置されるかを考察するものである。この研究は、2橋結び目の結び目解消操作の4-プラット表示での特徴付けを含んでいる。これにより、(2 x 1)-チューブ領域内での結び目の指数関数的増大度については、当初平成28年度に予定していた結果を得ることが出来た。さらに、2016年8月にJeremy Eng氏を埼玉大学に招き、格子結び目の数え上げと局所性に関する議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、28年度内に(2 x 1)-チューブ内の任意の結び目、および、任意の非分離絡み目は同じ指数関数的増大度を持つことを示すことが出来た。さらに、(2 x 1)-チューブ内での自明な結び目についてのパターン定理の証明にも成功することが出来た。これにより、結び目の個数に関するより精密な評価を行えるようになった。これらの議論は平成29年度に行い予定であったものであり、当初の予定以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を踏まえ、(2 x 1)-チューブ領域内でのより精密な格子結び目の個数に関する評価と、より一般の領域での指数関数的増大度の研究を行う。それに向け、チューブ状領域での結び目の形状について、局所的、非局所的という概念を導入した。(2 x 1)や(3 x 1)-チューブ領域内の結び目においてシミュレーションを行い、その割合を求めている。これらの議論は、今後より一般の領域内での結び目の形状の特徴付けへの応用があると考えている。これらの研究を、石原海氏、Chris Soteros氏、Jeremy Eng氏等と行う。
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