この研究では、希薄溶液内のDNAやタンパク質などの環状高分子のモデルとして考察される、立方格子に埋め込まれた結び目(格子結び目)について、そのトポロジーに関する研究と統計力学的エントロピーに相当する指数関数的増大度の研究を行っている。ここで考える格子結び目は、3次元ユークリッド空間において全ての座標が整数である有限個の点とそれらの点を結ぶ長さが1の辺有限個で構成される結び目、絡み目である。 今年度の研究では、石原海氏、Chris Soteros氏、Nicholas Beaton氏、Jeremy Eng氏とともに、チューブ状領域内の格子結び目に着目し研究を行った。ここでは結び目の局在化について考察し、どの結び目も結び目が局在化する形状と非局在化する形状が存在することを証明した。さらに、それらの存在確率に関する成果を得ている。また、局在化結び目と非局在化結び目それぞれの長さに関する研究を行った。この成果のプレプリントを発表した(arXiv:1803.08212)。この研究は、ナノチャンネルを通過するDNAのモデル化への応用が考えられる。最近の研究で、ナノチャンネルをDNAが通過する際の情報が得られているが、その情報をもとにDNAに含まれる結び目の様子が考察されている。我々の研究は、そこに現れる結び目についての詳細な情報を与えるものとなる。これは次の研究の課題となる。 これらの研究を行うために、Chris Soteros氏、 Nicholas Beaton氏、Jeremy Eng氏と、カナダと東京において研究打ち合わせを行った。
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