研究課題/領域番号 |
16K13756
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大鹿 健一 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70183225)
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研究分担者 |
角 大輝 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40313324) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Klein群 / 複素力学系 |
研究実績の概要 |
極限集合間の同変連続写像,いわゆるCannon-Thurston写像についての研究を行った.Thurstonの提出した重要な問題として,「変形空間でCannon-Thurston写像が連続に振る舞うか」というものがある.Mj-Seriesは擬Fuchs群が強収束するときはCannon-Thurston写像は一様収束することを示している.一方幾何的極限が代数極限より真に大きい場合は,各点収束すらしない例があることも,Mj-Seriesにより与えられている. 今回Mahan Mjとの共同研究で,擬Fuchs群で変形空間の境界の群に代数収束する列について,Cannon-Thurston写像が各点収束するための必要十分条件を与えることができた.具体的には以下のことを示した.Cannon-Thurston写像が各点収束しないのは次の条件が満たされる時のみである:(1)代数極限がpartially degenerateであり,(2) simply degenerate endで,幾何的極限のcoupled endに持ち上がるものがあり,(3) (2)のendの近傍の境界にはuntwisted cuspがあり,(4) (2)のendのending laminationと(3)のcuspのparabolic curveが作るcrown domainがcoupled endの片割れで実現できる.Mj-Seriesの反例は典型的にこの状況になっているが,その他にも様々な種類の反例を具体的に構成することもできる.さらにこのような各点収束が成り立たない状況で,収束が崩れるのは上のような実現を持つcrown domainのtipsにおいてのみであることも示せた. この結果は2017年2月に中国科学院の研究集会で紹介した.今後論文として出版する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cannon-Thurston写像に関する重要な問題を解決することができた.これは従来の3次元幾何的方法のみに頼っていては,解けなかったものであり,本研究の重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
Cannon-Thurston写像の収束についてはさらに,一般の場合の問題が残っているので,これを推進したい.またCannon-Thurston写像のnon-injective pointsの解析についての研究にも取り掛かる.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度開始した韓国,インドとの共同研究は,現地に赴き研究を推進するつもりであったが,相手国の都合と合わせることができなかったため,韓国,インドへの出張は次年度に行うことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は韓国,太田のKAISTに赴き,共同研究を推進する.特にCannon-Thurston写像のnon-injecitive pointの研究,pseudo-Anosov写像のダイナミクスについての研究を完成させることを目指す.またTata InsituteのICTSに出張し,Cannon-Thurston写像の収束に関するMahan Mjとの共同研究を完成させる.
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