研究課題/領域番号 |
16K13758
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
山田 澄生 学習院大学, 理学部, 教授 (90396416)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フィンスラー幾何学 / ヒルベルト計量 / 凸幾何学 / 複比 / タイヒミュラー空間 / モジュライ / フンク計量 / 射影幾何学 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、連携研究者(Athanase Papadopoulos)と共に、定曲率空間内の凸体の外的領域に定義されるフィンスラー計量の幾何学を解明した。この研究課題の文脈では、昨年度Timelike Hilbert and Funk Geometriesという論文として発表した。その自然な延長として、当該年度においては、1960年代にH. Busemannによって提唱された方法論を、研究代表者(山田)と連携研究者(Athanase Papadopoulos)の近年の射影幾何学の変分的な構成法を用いることで凸体の外的領域における射影幾何学を介して、ド・シッター空間の一般化を定式化した。より具体的には、n次元射影空間におけるn次元単体の外的領域の幾何学が線形ノルム空間であることを示した。また当該年度新たに、バーゼル大学のNobert A'Campo氏との共同研究の形でリーマン面のタイヒミュラー空間の幾何学をフィンスラー幾何学の観点から継続的に研究を進め、現在タイヒミュラー空間を自然に含有する複素構造全体からなる空間上のシンプレクティック幾何学を構築中である。 今年度は論文の執筆という形での情報発信はなかかったが、現在本年度に得られた新たな知見の集積を行っており、研究の進展という意味では、定曲率空間上のヒルベルト幾何およびタイヒミュラー空間上のヒルベルト・フンク幾何学の両局面において生産的な一年となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限次元または加算無限次元ユークリッド直積空間の第1象限は、様々な凸体の中でも非常に重要な空間である。特に本研究課題で進めてきたフンク計量およびヒルベルト計量を介した第1象限の幾何学の定式化は、本研究課題のいくつかの異なる文脈ですでに実を結んでいる。最終年度となる2019年度において、これまでに培ってきたフィンスラー幾何学および射影幾何学の知見を用いて、新たな距離空間の幾何学を定式化する準備が整ったという意味において、本課題の進捗は順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
バーゼル大学のNobert A'Campo氏との共同研究において、リーマン面のタイヒミュラー空間の幾何学をフィンスラー幾何学の観点から進めている。特にタイヒミュラー空間を自然に含有する曲面上の複素構造全体からなる空間上のシンプレクティック幾何学は、タイヒミュラー空間上に定義されるタイヒミュラー距離とベイユ・ピーターソン距離のそいう方の特徴を相関的に捉えることを可能にすることが期待され、この方向性におけるタイヒミュラー空間の微分幾何学の新たな定式化を進めていく。またストラスブルグ大のPapadopoulos氏と共に、加算無限次元ユークリッド空間の第1象限のヒルベルト幾何学の性質を、部分多様体論の観点から表現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
連携研究者Nobert A'Campo教授の当該年度後半に2週間の来日を予定していたが、年末に急遽先方の都合が合わなくなり、来日が実現しなかったため。
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