研究課題
リーマン面をはじめとする多様体上には、定義される幾何学的な正の符号を持つ量(例:閉測地線の長さ)の(可算無限)族が豊富に存在する。それらを第1象限の座標とすることで、多様体のモジュライを決定するという方法論の確立は、代数幾何学的な手法によって牽引されてきたモジュライ空間論に新しい視点を導入することを可能にした。この観点から、タイヒミュラー距離関数と呼ばれるリーマン面の変形を測る重要な指標に新たな解釈を、N. A'Campo氏との共同研究において提供した。この結果は現在論文として執筆中である。一方で、ユークリッド凸体の外的領域は、凹体として解析的に興味深い性質を持っており、凸解析との対比を介して、新しい距離空間のカテゴリーである「時間的幾何学」を定式化した。実は、「時間的幾何学」という概念は半世紀前にH.Busemannによって提唱されたが、それ以来ほぼ完全に忘れ去られていたが、本研究の文脈において新しい意義が見出された。ユークリッド空間の球体上に定義されるヒルベルト計量は、双曲計量のベルトラミ・クラインモデルであることは歴史的によく知られているが、非自明な宇宙項を持つアインシュタイン方程式の厳密解であるド・シッター計量が、球面上で点対称に配置された球体の対の外部領域に定義されるヒルベルト計量と同一視されることを、本研究において厳密に定式化し、A. Papadopoulos氏との共著で論文"Timelike Funk and Hilbert geometry"として発表、2019年度に専門のジャーナル(Differential Geometry and its Applications)に掲載された。ローレンツ幾何学の一般化としてのフィンスラー幾何学は、未だ創成期にあり、本年度の研究実績は今後その重要な布石となることが期待される。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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