研究課題/領域番号 |
16K13762
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
植田 好道 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (00314724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行列値確率過程 / 自由確率論 / 大偏差原理 / 熱核 |
研究実績の概要 |
行列値確率過程である matrix liberation process を自由確率論的情報量 orbital free entropy に結びつける部分の問題を考察した.matrix liberation process のノイズはユニタリ群上の Brown 運動であるが,その時間無限大極限としてユニタリ群上の一様分布が現れることが知られている.これが orbital free entropy の定義の材料なのである.我々の問題は大偏差原理なので,この収束が行列サイズ無限大極限に関して指数的なものであることを示すのが標準的な方針であろう.しかし,この方針は難しい.そこで,代わりに熱核の対数関数の行列サイズ無限大スケーリング極限の時間無限大漸近挙動の問題に変換して考察している.ここまでは昨年度までの研究ではっきりしていたことである.昨年度までは確率論的な手法でこの熱核の問題を攻略しようとしていたが,年度途中から幾何解析の手法を探ることにした.結果として,熱核の問題を予想通りに肯定的に解決した.ちょうど本研究課題第2のアウトプットである論文(Matrix liberation process, I; Large deviation upper bound and almost sure convergence)の査読が終わり校正する機会が年度終わりにあったので簡単に事実だけをアナウンスしておいた.これは更なる研究の一部として発表するつもりである.上述の更なる研究の展開の一部として,orbital free entropy を再考察し,結果として orbital free entropy の定義に関する小さい結果を得ると共に,それに関する少なからずの問題が matrix liberation process に対する大偏差原理に帰着することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱核の問題が解決し着実に研究が進んでいるから.
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今後の研究の推進方策 |
行列値確率過程の研究の平行して行う予定であった研究にももう少し時間を割きたい.本挑戦的萌芽研究に引き続く本格的研究の種をもう少し増やしておきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
10月に異動があり予定して居た9月のパリ出張を取りやめた.他方で,本研究課題に密接に関わる一ヶ月の研究プログラムがモントリオールで予定されており,その滞在のために倹約したというのもある.
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