研究課題
自由群のケーリーグラフの辺の長さが変動する場合に,正規部分群の収束指数と商グラフの増大度がみたす新しい不等式について研究した.コンピューターによる数値実験 (mathematica) を多数行い,不等式が正しいであろうことが予想できた.その証明のために,昨年度までの研究であるグラフ上のランダムウォークとマルコフ行列から定まる離散ラプラシアンのスペクトルに関する解析を再検討し,議論の道筋を整理することができた.最終的な証明には至っていない.自由群のケーリーグラフへの部分群の等長的作用に関する収束指数と,商グラフ上の離散ラプラシアンのスペクトルの底との間の Grigorchuk の余増大公式や,双曲空間に作用するクライン群の収束指数と双曲多様体上のラプラシアンに対する Sullivan の定理では群の収束指数の1/2で相転移が起こる.また,発散型の双曲群の正規部分群の収束指数は元の群の収束指数は1/2より真に大きい.これらの現象を研究集会での講演で統一的な視点で解説した.また,これらの結果の原点となる論文については議論をより正確に書き直して出版前の最終原稿を完成した.距離空間上の解析学について幾何学的群論との関連性について考察した.中心的な概念は写像の擬対称性と測度の倍増性である.ユークリッド空間上の関数に対するポアンカレの不等式の測度距離空間上での定式化およびアールフォルス正則性の一般化について調べた.擬対称写像で不変な各種の性質をみたのち,一般的な仮定をみたす測度距離空間がユークリッド空間上の正則性をもつ領域に擬対称埋め込みをもつことを使って,新しい研究課題を構想した.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Groups, Geometry, and Dynamics
巻: 14 ページ: -
10.4171/GGD/547
10.4171/GGD/548