研究実績の概要 |
主な研究目的は複合媒質上の伝送問題に着目し, 伝送条件を伴う優決定問題の解の幾何学的特性(解の対称性等)を明らかにすることであった。
特に, 異なる導電率をもつ2種以上の複合媒質特有の中性導体の特徴付けの問題について数理物理学の逆問題の専門家である研究協力者の Hyeonbae Kang 教授(Inha 大学, 大韓民国)と密な共同研究を実施した。直接の討論・情報交換を2016年7月19日から7月26日および11月17日から11月18日の期間東北大学, 2017年2月15日から2月18日までの期間 Inha 大学において行った。
等方的媒質内の場合は既に中性導体による同心球の特徴付けの定理が Kang 教授との共著論文:H. Kang, H. Lee, and S. Sakaguchi,“An over-determined boundary value problem arising from neutrally coated inclusions in three dimensions", Ann. Scuola Norm. Sup. Pisa, (5) 16-4 (2016), 1193-1208)において得られていたが, その証明を見直すことによってその定理における介在物(core)の単連結性の仮定は不要であることがわかった。このことを著書:「偏微分方程式の解の幾何学」サイエンス社, 2017年3月発行の第7章で言及した。非等方的媒質内の場合は, 未解明である複合媒質からなる中性導体による confocal ellipsoids の特徴付けの問題に挑戦し, その困難さを炙り出し, この問題が調和関数のある平均値の性質と深く関連していることを発見した。Kang 教授との共同研究を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非等方的媒質内の場合の未解明である複合媒質からなる中性導体による confocal ellipsoids の特徴付けの問題は挑戦的で非常に困難であることが当初から予想されていたが, 数理物理学の逆問題の専門家である研究協力者の Hyeonbae Kang 教授(Inha 大学, 大韓民国)との密な共同研究の実施により, その困難さを炙り出すことができて, 解法へのある手掛かりが見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もさらに, Hyeonbae Kang 教授(Inha 大学, 大韓民国)との共同研究を継続し, 普段の国内外の研究協力者との討論・情報交換を様々な機会を通して活発に行い, 本研究課題の解明に努める。
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