研究実績の概要 |
研究目的は複合媒質上の伝送問題に着目し, 伝送条件を伴う優決定問題の解の幾何学的特性を明らかにすることであった。 特に複合媒質特有の中性導体の特徴付けの問題について海外研究協力者の Hyeonbae Kang 氏(Inha 大学教授)と密な共同研究を実施した。直接の研究打合せを2017年11月29日から12月3日までの期間および2018年3月26日から3月30日までの期間 Inha 大学において行った。非等方的媒質内の場合の未解明である中性導体による confocal ellipsoids の特徴付けの問題に挑戦し, ニュートンポテンシャルの性質の研究の重要性を確認した。Kang 教授との共同研究を継続中である。 単一媒質について研究されてきた Serrin 型楕円型優決定問題の一般化としての複合媒質に関する2相楕円型優決定問題を考え, 境界が球面である場合には複合媒質は同心球に限ることを示し, 2相熱伝導体の不変等温面に関する論文 S. Sakaguchi,“Two-phase heat conductors with a stationary isothermic surface and their related elliptic overdetermined problems", RIMS講究録別冊, 掲載受理, の第5章で述べた。さらに, 2相楕円型優決定問題の場合一般には同心球ではない領域が存在することを2相熱伝導体の不変等熱流面に関する論文 L. Cavallina, R. Magnanini and S. Sakaguchi, “Two-phase heat conductors with a surface of the constant flow property", arXiv:1801.01352v1, 学術雑誌に投稿中, の第6章で示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非等方的媒質内の場合の未解明である複合媒質からなる中性導体による confocal ellipsoids の特徴付けの問題は挑戦的で非常に困難であることが当初から予想されていたが, 数理物理学の逆問題の専門家である研究協力者の Hyeonbae Kang 氏(Inha 大学教授)との密な共同研究の実施により, ニュートンポテンシャルの性質の研究の重要性を確認しその困難さを炙り出すことができて, 解法への手掛かりが見えてきた。 また, 複合媒質に関する2相楕円型優決定問題について, Serrin 型の定理が一般には成立しないこと, 境界が球面である場合は成立することがわかり, 重要な進展があった。
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