研究成果の概要 |
伝導率の異なる介在物を含有する複合媒質を考える。媒質内の電気伝導や熱伝導は媒質の伝導率に依存するため, 相異なる 2種の媒質の界面上では光の屈折のように電流や熱流に対して伝送条件が成立する。主な成果の一つは複合媒質上の定常電気伝導を扱い, 外部の一様な電場への影響の少ない無限に多くの非対称な近似中性導体の存在を示したことである。もう一つは定常熱伝導を扱い, 球形複合媒質の境界上の温度と熱流が共に一定の場合は介在物は同心球に限ることを示し, さらに境界上の温度と熱流が共に一定でも非対称な複合媒質が無限に多く存在することを示したものである。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
一つの物質からなる単一媒質上の電気伝導や熱伝導の数理モデルは最も単純で多くの研究がなされてきた。一方, 外部一様電場に全く影響を与えない中性導体は1962年に Hashin, Shtrikman らが同心球からなる2相の複合媒質によって構成し, 複合媒質の重要性が認識された。もちろん, 物理的・工学的に自然な複合媒質(複合材料)の数理モデルの重要性は言うまでもない。本研究成果の学術的・社会的意義は単一媒質上の数理モデルに対応する複合媒質上の数理モデルは一見同様に見えるが本質的に異なることを電気伝導や熱伝導の単純な数理モデルで数学解析を用いて示したことにある。
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