研究実績の概要 |
当該年度は、理論的にも応用上でも重要ないくつかの函数不等式を等式の枠組で研究し、期待どおりの成果を得る事ができた。特に、ハーディーの不等式とレリッヒの不等式について、等式の枠組みによる定式化を見出し、最良定数を与える非自明な函数の非存在を剰余項消滅条件として特徴づけた。これにより、点列コンパクト性に依存していた従来の議論を、より明確で具体的な議論に書き換えることができた。 これらの成果は Machihara Shuji, Ozawa Tohru, Wadade Hidemitsu, Remarks on the Hardy type inequalities with remainder terms in the framework of equalities として日本数学会発行の"Advanced Studies in Pure Mathematics" に出版予定であり、 Machihara Shuji, Ozawa Tohru, Wadade Hidemitsu, Remarks on the Rellich inequality としてSpringer社の"Mathematische Zeitschrift"に出版済みである。また、フーリエ制限定理において重要な役割を果たす球面上への跡定理を研究し、その安定性を評価の形で定式化し、証明を与えた。特に、安定性を記述するための「最適化函数の集合からの距離」の評価を双対性を用いた枠組に抽象化し、元々の問題とその双対問題における「最適化函数の集合からの距離」の双対性を見出し、理論化した。その成果は Bez Neal, Jeavons Chris, Ozawa Tohru, Sugimoto Mitsuru, Stability of trace theorems on the sphere としてSpringer社の"The Journal of Geometric Analysis"に出版済みである。加えて、その他多数の論文を出版し、その成果を研究集会等で発表した。詳しくは10.研究発表の項に記載した。
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