最終年度は確率微分方程式の解の確率分布関数に対する任意のオーダーの高次離散化法を構成した。ここでいう任意のオーダーの高次離散化法の構成とは、数学的に示したことだけでなく、具体的な計算方法・アルゴリズムを提示したことを言っている。任意のオーダーの高次離散化アルゴリズムは通常得るのが困難であるが、ストラトノビッチ反復確率積分の積の計算とマリアバンの部分積分を繰り返し用いることで成功した。また、確率分布関数の近似においては不連続なテスト関数を扱うため近似の構成と誤差評価が困難であるが、マリアバン共分散のモーメント評価をうまく使うことによって理論的正当化を行った。離散化が機能していることは数値計算により確認している。確率分布関数に対する任意のオーダーの高次離散化法の研究結果はSIAM Journal on Numerical Analysisに掲載された。 さらに、確率微分方程式の解の期待値の初期値に関する微分に対する高次離散化にも成功した。この結果は、SIAM/ASA Journal on Uncertainty Quantificationに掲載された。 また、マルコフ連鎖による高次離散化法も考案し、従来の方法より少ない離散化数で高精度な近似結果が得られることを確認した。これは2018年に得られたミルシュタイン近似を拡張した手法 (Applied Numerical Mathematicsに掲載) を、さらに拡張して高次離散化法に繋げたものである。マルコフ連鎖による高次離散化法の研究結果はMonte Carlo Methods and Applicationsに掲載された。 これらの研究成果をベースとした新手法がいくつか得られ、現在も論文を数本投稿している。
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