研究課題/領域番号 |
16K13777
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩見 真吾 九州大学, 理学研究院, 准教授 (90518119)
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研究分担者 |
本田 知之 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80402676)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数理モデル / 拡散方程式 / データ解析 |
研究実績の概要 |
「古典的で静的な統計解析」及び「動的ではあるが完全混合状態を仮定したODEモデル」では、時空間的に拡大するウイルス感染の実験データを定量的に解析し、真に重要な情報を抽出する事は困難である。何故ならば、これらの感染伝播は本質的に空間的な制約を受けており、空間構造を無視した数理モデルを用いて解析する事は出来ないからである。これまで日本の数学モデリングは、生物学などに使われている数理モデルを材料にして定性的に解析するという事を行ってきた。しかし数理モデルに表され・仮定されている量を測定して、数理モデルが実際の状況で記述力を持ち・予測力を持つ事を実証する事は、数理科学として極めて重要な研究であり、応用数学の未来を切り開くものである。これらの数理モデルは単純かつ汎用性に富んでいる事より、様々なウイルス感染症の理解を促進してきた。実際、従来の数理モデルは、対象とする実験データに空間的要素がない場合には十分であった。しかし、近年、2光子励起顕微鏡等を用いた計測技術の発達により感染のリアルタイムイメージングが可能になってきた。これらのデータを定量的に解析するためには、ウイルス感染の時空間動態を記述できる数理モデルの構築が希求されている。本課題では、主に培養細胞を用いたボルナウイルス感染実験から得られる時空間データを扱う。そして、反応拡散方程式による数理モデルの数学的枠組みおよびそれらを用いたデータ解析理論を構築し“時空間ウイルス学”を展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
空間構造を考慮した数理モデルの開発に取り組んでいる。当初計画していた、ボルナウイルスが空間的に拡散する数理モデルに加えて、HIV-1がcell-to-cellで感染を広げる動態を格子空間上の数理モデルで記述する事も始めた。また、本研究提案のIwami et al., eLifeの研究の追加実験と数理モデリングに取り掛かった。
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今後の研究の推進方策 |
開発した反応拡散方程式を有限要素法による領域メッシュ分割、弱形式表現である事より積分方程式の数値計算、可視化プロットを行う。また、MATLAB や MATHEMATICAのmethod of lines (PDE を ODE の束にして大規模 ODE を解く方法)によるシミュレーション結果と比較する事で動作検証も行う。さらに、基本再生産数や伝播速度の定式化には、遠距離拡散も考慮した空間版 renewal 方程式を導出する事で進めていく。研究が計画どおりに進まない場合は、反応拡散方程式の専門家である森田善久氏(連携研究者・龍谷大学・教授)から助言をもらい円滑に課題を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が予想以上に進んだために計画していた研究打ち合わせを後ろ倒ししたため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の打ち合わせを今年度に回しておこなう。
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