研究課題/領域番号 |
16K13778
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
二宮 広和 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (90251610)
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研究分担者 |
桂田 祐史 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (80224484)
池田 幸太 明治大学, 総合数理学部, 専任講師 (50553369)
小野寺 有紹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (70614999)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パターンダイナミクス / 複素領域 / 反応拡散系 / 全域解 / ヘレ・ショウ問題 |
研究実績の概要 |
複雑な形状をもつ非線形偏微分方程式のパターン解は,数値計算によって得られていが,数学的には証明するのは難しい.それらの数学的に表現のために,本研究課題では,非線形放物型偏微分方程式を複素領域に拡張し,その特異点の実軸からの距離等の情報から特徴付けることを目的としている.空間変数を複素領域に拡張すると,放物型・楕円型偏微分方程式は適切でなくなる.そのため,本研究課題では非線形偏微分方程式を複素領域に拡張すること,および,その複素特異点の位置のダイナミクスとパターン形状の関係に関する研究を行っていく. まず,等角写像や特殊関数等を用いた厳密解を特異点の視点から考察し直し,特異点の位置情報を得ようと考え,今年度は,関連する論文の情報収集を行い,分担者を集めた複数回の情報交換を行った.また,複素領域上への拡張方法を確立し,複素特異点の位置情報を得るために,簡単な方程式における複素領域への拡張を数値計算により試行した.さらに,ヘレ・ショウ問題における樹枝状形状の数学的構成を目標として,流体領域の形状とそれに付随する等角写像の特異点との関係を研究した. なお,これらの研究においていくつかの困難な点があり,そっらを打開する手法として,新しい全域解の構成を行った.全域解は,放物型方程式の解でありながら,時間が正にも負にも解ける解のことである.自由境界問題の解として,回転するスポット解の構成に成功し,解の形状と複素特異点の関係を調べる情報を増した.また,1次元のAllen-Cahn方程式に関しては,フロントを3つもつ全域解の構成に成功し,現在,論文をまとめているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複素領域への拡張問題は,数学的にも数値的にも大変難しい問題である.現在のところ,これまでの文献を調べて,それらの情報を総合的に判断するべく,分担者と協力して行っている.これらの文献調査により,研究組織全体として問題の理解が深まった.放物型方程式の複素領域上への拡張に関する数値計算により複素特異点の情報は集まりつつある.自由境界問題であるヘレ・ショウ問題における樹枝状形状の数学的構成を目標として,粘性流体領域の形状とそれに付随する等角写像の特異点との関係についても研究を行い,研究組織全体で議論を行った.また,可積分性と複素領域への拡張問題の関係についても議論した. なお,全域解の構成については,自由境界問題の回転スポット解の構成を行い,論文に発表した.フロントを3つもつAllen-Cahn方程式の全域解の構成に成功し,現在,論文をまとめているところである.また,無限遠からの分岐についても,研究協力者と議論を進め,一部進展を得た.以上より,概ね順調に進んでいると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
反応拡散系の複素領域への拡張については,昨年度の知見をもとに,複素領域への拡張した際の複素特異点の情報を詳細に得る数値計算法の確立を行うと同時に,理論的なアプローチを試みる.まず,Allen-Cahn方程式の新しい全域解の構成を行う.これにより,特異点の運動とパターンの新しい関係を調べる.これについては,これまでの現在進展中であり論文にまとめていく.また,ヘレ・ショウ問題のような自由境界問題については,複素特異点とパターン形成の関係の数値計算を行うことと,厳密解の数値計算による情報を集める.これらの情報もとに研究代表者・分担者と議論を重ねる.無限遠からの分岐や爆発問題と複素特異点の関係については,ある程度の進展を得たので,これを論文へとまとめていく.新しい試みとして,未知変数の複素化による影響をいくつかの方程式で数値計算して調べていく.2次の非線形項の場合には,すでに結果を得ているが,Allen-Cahn方程式など他の方程式への拡張を試みる.分担者の分野は広がりをもっているため,それぞれの分野への知見を生かして,この問題解決への糸口を見つけていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
招聘あるいは訪問しようとしていた海外研究者が,今年度来日することになったため,訪問を取りやめたためである.また,分担者が全員関東の大学に移動したことも要因のひとつである.
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次年度使用額の使用計画 |
当海外研究者の日本の滞在先を訪問して,議論を行う予定である.この議論の進展を見て,再度訪問するか,別の研究者を訪問するか検討する予定である.
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