研究課題/領域番号 |
16K13782
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
相川 祐理 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (40324909)
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研究分担者 |
庄司 光男 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (00593550)
古家 健次 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80783711)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アストロバイオロジー / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
生命の材料物質となるアミノ酸の生成については、分子雲から原始地球までさまざまな環境での反応過程が提案されている。しかし現在までのところ、どの環境、過程が最も効くのか定量的な評価はできていない。定量化には各過程で起こる素反応の反応経路や反応速度の解明が不可欠である。本研究ではパイロットスタディーとして、星間分子雲でのアミノ酸生成における素反応の反応経路や活性化エネルギーを第一原理に基づく量子科学計算によって解明する。今年度はGarrod et al. (2013)で提唱された星間分子雲でのグリシン生成の主要な反応を、HCNを出発物質にする経路とアンモニアとメタンを出発物質にする経路に分け、それぞれについて活性化エネルギーの有無を調べた。その結果、HCNを出発物質とするの経路ではHCNへの水素付加反応で7.75 KJ/mol、アンモニアを出発物質とする経路ではCH3COOH + OH の反応で33.41 KJ/molの活性化エネルギーが存在することがわかった。これらが各経路での最大のエネルギー障壁となる。よって低温下ではHCNを出発物質にする経路の方が効率がよいと予想される。しかし、Garrod (2013)のモデルは本研究で調べた主要反応以外にも多くの反応を含んでおり、それらがバイパスとして機能する可能性もある。活性化エネルギーによって系全体としてのグリシン生成効率がどれくらい変化するかは、ネットワーク計算で調べる必要がある。これらの結果は論文にまとめ、近日中に学術雑誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化学反応ネットワークモデルを用いたキーリアクションの選定を行う予定であったが、他の研究に時間を取られ、完了することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で分かった活性化エネルギーをGarrod (2013)のネットワークモデルに取り込み、グリシン生成の効率がどのように変化するかを調べる。また、今年度調べた以外の反応について、分岐比などの不定性の大きいものについてその値をランダムに変化させることで、系全体での分子生成に効くキーリアクションを選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機やPCなどの設備は、既存のものおよび校費等他の予算で購入したものを利用できた。研究成果発表も、一つの研究会で他の研究発表も行った等の理由で本研究の予算を使わずに行うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度4月に研究代表者が筑波大学から東京大学へ異動した。分担者および連携研究者の所属する筑波大学への打ち合わせ旅費が必要である。またそれに伴い、購入後5年以上経過している携帯用のノートPCを更新したい。
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