本研究では、発見が困難である早期型星(BA型星;>1.5太陽質量)周りの惑星を検出するための新たな手法を開発することを目的としている。具体的には、従来の視線速度法のように惑星による中心星の視線速度変化を検出するのではなく、周囲を回る惑星の放射スペクトルを近赤外高分散分光観測によって直接検出することを試みる。早期型星のスペクトルには吸収線がほとんど見られないため中心星の視線速度を精度よく測定することはできないが、逆に中心星のスペクトルに埋もれた惑星のスペクトルは検出しやすくなると考えられる。昨年度までの研究によって、すばる望遠鏡の赤外線分光器IRCSでの観測を想定した場合、地球大気の吸収線をきれいに取り除くことができれば、信号ノイズ比1000程度のデータを取得できれば惑星スペクトルの検出が可能であることが分かった。しかし、想定される波長分解能(R=20000)では地球大気吸収線の完全な除去が困難であることも同時に分かった。
これと並行して、昨年度は岡山188cm望遠鏡を用いて惑星放射検出に適した新たな早期型星周りの惑星サンプルの選定観測を実施しようとしたが、観測機器の不調のため十分なデータを得ることはできなかった。そのため、今年度も同様の観測を試みたが、観測時期や悪天候の影響で残念ながら有用なデータを得ることはできなかった。一方、すばる望遠鏡での観測を補助する目的で岡山188cm望遠鏡のMuSCATを用いた多波長トランジット観測を平成29年度に実施済である「KELT-17」という早期型星を周回する惑星系については、今年度岡山188cm望遠鏡の可視高分散分光器HIDESでトランジット中のスペクトルデータを少しではあるが取得することができた。今後これらを組み合わせて惑星の軌道・物理パラメータに制限をつけることができれば、本研究で開発した手法の実用性をより精度よく検証できる。
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