研究課題
X線天文衛星に搭載される観測装置は、斜入射X線反射鏡とピクセル検出器としてのX線CCDを組み合わせた形式が標準になっている。角度分解能としては、1999年打ち上げのChandra衛星が達成した0.5秒角が例外的に優れており、技術的、コスト的な理由でこれを再現するのは難しいとされている。実際、2030年代打ち上げ予定の超大型X線天文台ATHENAでも目標は5秒角である。我々は、格子と検出器だけからなる単純な構成で、このChandra衛星をしのぐ角度分解能のX線撮像システムを、超小型衛星サイズで実現する原理を発案した。それが、多重像X線干渉計モジュール(Multi Image X-ray Interferometer Module; MIXIM)である。新たな原理の干渉計ともいえるし、マルチスリットカメラの撮像システムで、回折でぼけてしまう像を、タルボ干渉効果を利用してシャープにする原理ともいえる。本研究では、まず、フレネル近似における計算と、マイクロフォーカスX線源と30ミクロンピクセルX線検出器による原理実証を行い、4倍拡大撮影で干渉像の撮影に成功した。その後、よりピクセルサイズの小さい可視光用CMOSピクセル検出器に着目し、X線検出への流用をこころみた。結果として、室温でX線光子のエネルギー測定まで行えることを見出し、シンクロトロン放射光の平行X線ビームを照射する実験で、等倍撮影で干渉像を得た。角度分解能に換算すると、0.26秒角を実現している。当初の目的は超小型衛星サイズのシステムであったが、格子、検出器間の距離を変えることでさまざまな衛星形態に対応可能で、例えば、100mの編隊飛行では0.01秒角の角度分解能まで望めることをしめした。X線天体の観測装置に、全く新たな概念を導入しその実証までおこなったことになる。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件)
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