パルサーとfast radio burst (FRB) は、その実体は異なると考えられるものの観測される電波パルスは同様であり、本質的には同じ解析アルゴリズムで検出することができる。これまでの開発によって、コヒーレントデディスパージョンを行うパルス検出プログラムを作成し、ジャイアントパルスを放つパルサーおよびFRBの観測を行ってきた。実際に観測したのは6つのパルサーであり、現在のところCrabパルサーでのみジャイアントパルスを検出し、そのパルスプロファイルやパルスタイミングについて解析を進めている。目下の問題はパルス強度の較正であり、その方法を確立することで、定常的なパルサー観測システムが日本で初めて完成すると言えるだろう。また他の天体についても、観測時間を増やすことでジャイアントパルスが検出できると期待され、鋭意観測を進めている。 ただし上記の成果は副次的なものであり、本研究の目標はFRBをVLBI観測するために、国内電波望遠鏡にその探査システムを実装することである。上記のパルサー観測は山口32m鏡および日立32m鏡を用いて実施したが、これはFRBのVLBI探査をこの二つの望遠鏡で行うための準備であり、実際にこれらに対してパルス探査システムを実装した。ただしFRBを本格的に探査するためには解析に要する時間を短縮化する必要があり、現状では「新しいFRBを探査」することは困難である。とはいえ、バーストを繰り返すRepeating FRBの2例目が報告され、その観測を約10時間実施した。報告された天体位置は誤差が大きいこともあり、これまでの観測では残念ながらパルスを検出できていないが、近々木曽シュミット望遠鏡との光・電波連携観測を実施予定であり、引き続き観測する予定である。これが成功すれば、FRBのVLBI観測も実現性が高まり、FRBの起源解明が大きく前進するだろう。
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