本研究では、紫外波長領域に対応した広禁制帯幅を持つ半導体材料を用いて、微弱紫外光に高い感度を持つフォトダイオードの実現を目指した。前年度までの研究では、n-SiC上にエピタキシャル成長させたAlGaN基板やn-Si上に成長させたGaN基板などを用いて高感度化の方策を検討してきた。そこでは、基板洗浄、エッチング、オーミック電極形成の熱処条件等の最適化を図るとともに、出力信号増大のため、アバランシェ型ダイオードの開発を進めてきた。今年度は従来用いてきたAlGaN基板によるダイオード開発から得られた知見を基に、さらなる感度向上のために、より高耐圧で高増幅度を達成するアバランシェ型フォトダイオードの開発に狙いを定め研究開発を行った。 まず、用いる広禁制帯幅半導体材料について、様々な観点から情報収集・検討を行い、膜厚や電気伝導性を正確に制御できる高品質SiC基板を用いることとした。研究では、種々の基板構造、プロセス条件に対してショットキー型ダイオードを試作し特性評価を行いながら、高感度のための方策について検討した。また、素子構造については、これまでの研究で確立したガードリング構造やフィールドプレート構造を取り入れ素子の高耐圧化を図った。 その結果、4H-SiC上にSiCを1-2umの厚さでエピタキシャル成長させた基板(キャリア密度10^{16}~10^{17}/cm^3)を用いて作製したダイオードにおいて、-70V以上の耐圧を得て、アバランシェ増幅を確認した。このとき、光感度として、波長260nmの紫外光に対して >1000A/W(10^4程度の増幅度)を達成した。 本研究により、高感度紫外光検出用半導体素子の実用化のための基盤が確立したといえる。今後、素粒子物理学、天文計測、医療、環境など微弱紫外光検出が必須となる様々な分野において、本研究成果が生かされていくことになる。
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