研究実績の概要 |
近年の急速な宇宙論的観測の進展により, 通常の物質は宇宙全体の僅か4.9%のみであるのに対して, 27%もの暗黒物質が存在していることが明らかになった. それ以降, 世界中で暗黒物質の直接探索実験が加速的に進んでいる. 直接探索実験は, 弱く相互作用をする比較的重い暗黒物質(WIMP)や" アクシオン" に焦点を当てて進められて来た. しかし, 非常な努力に関わらず暗黒物質の兆候は未だ発見されていない. そのために, 最近は理論的な注目が比較的軽い(keV{MeV スケール) 暗黒物質に集まっている. そのような状況のなか, 超伝導クーパー対解離を応用した新しい超伝導放射線検出器を開発し, その原理を検証するのが本研究の目的である. 初年度である平成28年度には, 冷凍機の準備, KID型超伝導検出器の開発, 超伝導検出器の読み出し系の整備などを行った. 冷凍機は約半日後に0.3Kに到達し, 100時間以上継続して運転できることを確認した. また, CALDER (cryogenic light detector for rare events search)実験を参考に, 暗黒物質に感度を持つKID型超伝導検出器のデザインを開始した. まだ, デザインの最適化は完了していなが, デザイン方法に関しては十分なノウハウを蓄積することができた. 読み出しはKEKがCMB実験用に開発したスキームを応用することを想定している. KEK CMBグループの承諾のもと専用電子回路と読み出しソフトウェアを得た. 現在, 本実験で使用するための準備を進めている.
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