研究実績の概要 |
近年の急速な宇宙論的観測の進展により, 通常の物質は宇宙全体の僅か4.9%のみであるのに対して, 27%もの暗黒物質が存在していることが明らかになった. それ以降, 世界中で暗黒物質の直接探索実験が加速的に進んでいる. 直接探索実験は, 弱く相互作用をする比較的重い暗黒物質(WIMP)や" アクシオン" に焦点を当てて進められて来た. しかし, 非常な努力に関わらず暗黒物質の兆候は未だ発見されていない. そのために, 最近は理論的な注目が比較的軽い(keV{MeV スケール) 暗黒物質に集まっている. そのような状況のなか,超伝導クーパー対解離を応用した新しい超伝導放射線検出器を開発し, その原理を検証するのが本研究の目的である. 我々はKID型素子を使って新しい放射線検出器の実現を目指している. 平成29年度には, KID型素子の製作環境の整備とKID型素子のテスト環境の構築を行った. まず, 東北大学西澤記念センターでの製作環境を整理した. 自作が可能になりこれ以降はR&Dのペースが早く成った. また, KEK CMBグループの承諾のもと専用電子回路と読み出しソフトウェアを得た. 合わせて, トリガー機能など自分達に必要な機能を改良/追加した. さらに, 241Amのγ線を照射して, 各種の基礎パラメータの測定にも成功した. 結果, 現在は理論的に予想される雑音レベルと比較して, 非常に大きい雑音があることがわかった. このままでは暗黒物質探索の感度を計算しても信じられる値にならない. 雑音の原因は, ほぼ磁場と外部輻射だということがわかった. 今後は, シールドを強化して, その結果をもとに暗黒物質探索の感度を評価していく.
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