研究課題/領域番号 |
16K13795
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岩田 高広 山形大学, 理学部, 教授 (70211761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動的核偏極 / メカニカルドーピング |
研究実績の概要 |
素粒子原子核実験分野で広範に用いられてきた動的核偏極(DNP=Dynamic Nuclear Polarization)による固体偏極標的実現の過程で重要なステップである常磁性物質のドープ法として従来の「ケミカルドーピング法」および「放射線照射法」の問題点を克服できる「メカニカルドーピング法」を新たに提案する。偏極目的核を含む母材をボールミルを用いて100nm 以下のサイズに粉砕し、常磁性物質を混合する合成化学の「メカノケミストリー」を応用し、偏極標的試料を調整し、1K、2.5T の環境に於いて能動核偏極を行い、この方法の有効性を実証する。これまでにフッ化ランタン(LaF3)をテスト試料として選び、偏極目的核としてLa(spin=7/2)、F(spin=1/2)に対してメカニカルドーピングを目指している。そのためには試料を数10nm程度のサイズまで粉砕することが必要だが、これまでこの粉砕に取り組んできた。その結果遊星型ボールミルによって、80nmの粒径が得られるところまで到達した。DNPの準備も冷却の予備テストを行い、クライオスタットの問題点を洗い出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LaF3の粒径80nm程度の微粒子を得ることができるようになった。まだ、収率の点では改善が必要だが、ほぼDNPを試すことができる試料作成の見通しがたってきた。また、DNPのための冷却についてもヘリウム4モードでならば、冷却システムの稼働を確認しているので、もう少しでDNPの確認テストに移行できるはずである。
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今後の研究の推進方策 |
試料の粉砕のための遊星ボールミルのボールとその容器を従来のメノウからより硬度が高く密度が高いジルコニアに替えて、微粒子化の効率を上げる。さらに、ボールのサイズを変化させ、微粒子の収率を向上させる。最終的にLaF3の1g程度の試料を得る。これに、ブタノールにTEMPO(フリーラディカル)を溶解した溶液を滴下して偏極試料を得る。その後、ESRによってTEMPOシグナルを測定し、TEMPOが均一の分布していることを確認する。 それをDNP用装置に取り付け、冷却し、ヘリウム4モードで約1K、2.5TでDNPを行なってみる。少なくとも、19F核の偏極度の向上が観測されることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた冷却実験の準備が遅れたため、必要な液体ヘリウムの購入が次年度に繰り越されたため
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の冷却実験のための液体ヘリウム購入にあてる。
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