研究課題
超伝導体素子による検出器は半導体検出器で達成しうる感度を遥かに超える可能性を持つことが期待されながらも,極低温での動作が必要・出力信号が微弱という取り扱いの難しさのため,超伝導体素子の持つポテンシャルを活かしきることができず,また一般に普及しているとは言い難い.本研究は超伝導隊トンネル接合素子STJをFD-SOIという半導体技術を用いた極低温での動作が可能な信号増幅器と組み合わせることにより冷凍機内部の超伝導体素子の至近での微弱信号増幅を可能とし,使い勝手の格段の向上を実現し,超伝導体と半導体の融合による革新的な検出器の創成を目指したものであった.前年度までの研究によってFD-SOI技術によるMOSFETを使用した実証試験用の信号増幅器がSTJの動作する300mKの極低温において動作することを確認し,実際にSTJの光パルス照射に対する応答信号を冷凍機の最低温ステージ上において増幅可能であることを実証した.またSTJに適した読出し回路である高速・低入力インピーダンスの増幅器を設計し極低温試験を行い,この結果を踏まえ増幅率の向上を図った増幅回路設計を行った.最終年度は,前年度に設計した増幅回路の試験を行った.これは容量性負帰還をもつ差動増幅回路によって実現された低入力インピーダンスの電荷積分増幅器であり,帰還容量を前バージョンから1/10にすることによって10倍の増幅率を得た.極低温冷凍機で3Kの環境での動作試験を実施し,室温で期待された増幅率約4mV/fCに対し極低温でもほぼ変わらない増幅率が得られることを確認した.また増幅器自体がもつ出力の入力換算雑音電荷は約0.1fCであり,これは近赤外光の単一光子に対するSTJの応答電荷1fCに対し十分小さく,この近赤外の単一光子に対するSTJの応答信号の増幅器として十分に実用に足るものであることが確認された.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Proceedings of International Conference on Technology and Instrumentation in Particle Physics (TIPP2017)
巻: SPPHY 213 ページ: 242~248
10.1007/978-981-13-1316-5_45
https://hep-www.px.tsukuba.ac.jp/twiki/bin/view/STJ/StjTalksPub