超対称性は、素粒子標準模型の未解決問題である階層性問題や世代構造の起源、更に暗黒物質の正体等を解決するアイデアとして理論と実験の両面から、これまで精力的に調査研究されてきた。所で、それら理論が現実世界を記述するためには、低エネルギー領域で超対称性が自発的に破れていなければならない。実際、いくつかの超対称模型で、非摂動効果による超対称性の自発的破れの有無が調べられている。ただし、その解析手法は、それら模型特有の性質を多用しているために、すべての超対称模型に適用できるわけではない。そのために、超対称性の自発的破れの有無を判定できる体系的、かつ非摂動的解析手法が求められている。
研究目的は、その体系的、かつ非摂動的解析手法の構築である。解析手法には、場の理論の非摂動的定式化である格子場の理論を用いる。超対称理論のグラディエント・フロー方程式から正則化に依らない格子上のエネルギー・運動量テンソルを構成して、真空エネルギーを数値計算で決定することで、超対称性の自発的破れの有無を判定する。この格子理論による手法は、一旦、格子上のエネルギー・運動量テ ンソルを構成できれば、原理的に数値計算可能なので、模型固有の性質によらず極めて汎用性が高い。 研究成果は、(1) 超対称Yang-Mills理論のグラディエント・フロー方程式の構成、(2)その方程式が超対称変換と無矛盾であることの証明、(3)相関関数の紫外有限性について、1次の摂動計算で確認し、摂動の全次数で紫外有限性を有することを証明、(4)その方程式が持つ超対称性と物理量の紫外有限性を利用して、エネルギー・運動量テンソルを含む超対称カレント多重項の正則化に依らない定式化である。本年度の成果は(3)と(4)で、日本物理学会にて講演を行った。また全体の成果を論文にまとめて雑誌に投稿中である。
研究協力者は加堂大輔氏(Cula大)である。
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