研究課題/領域番号 |
16K13799
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 貴之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10375595)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 実験核物理 / ショットキーピックアップ / イオン蓄積リング |
研究実績の概要 |
理研の線形加速器の大強度ビームと気体充填型反跳分離装置GARISを用いた10年以上にもおよぶ長期実験において、原子番号113番元素が合成され、ニホニウムと命名されるに至った。本研究は、次世代の新元素の識別方法として、蓄積リングに新元素を蓄積し、ショットキーピックアップ法によって新元素を1個から確実に識別する方法を提案する。蓄積リングに新元素を蓄積できれば、たとえ短寿命のうちにアルファ崩壊しても、アルファ粒子と娘核をそれぞれ識別し、親核を一義的に同定することができる。あるいはアルファ粒子を検出しなくとも親核、娘核、孫核と原子番号と質量数を決定すればどのような反応が起こったか一義的に同定することができる。ショットキーピックアップは1粒子に感度をもち、周回粒子の質量電荷比に比例する周回周波数を与える。したがって、バックグラウンドフリーで1粒子から粒子識別が可能となる。本研究は、この新しい方法を実現に近づけるために、まずショットキーピックアップのフィージビリティスタディを行うことを目的としている。 本年度は前年度に引き続き、新しいショットキーピックアップのための3次元電磁場シミュレーションを進めた。理研の蓄積リングに導入されているショットキーピックアップの性能を上回る必要があるため、誘導電磁場のロスとなるセラミック部分を排除した新しい設計を採用し、ほぼ最終的な形状を決めた。現在、シミュレーション方法を変えて多方面からのコンシステントで信頼性の高い評価を目指している。H30年度には試作機を製作しオフライン試験に着手したい。 一方、理研の蓄積リングのビーム実験において、不安定核78Geに対して6秒程度の長時間蓄積に初めて成功した。これによって蓄積リングでのビーム試験の準備は整ったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は電磁場シミュレーションに専念して、新しい共鳴ショットキーピックアップの設計を決定し、試作機を製作することを目標としていたが、まだ最終値に至っていない。シミュレーションを多方面から行っており、時間がかかっている。一方で、理研RIビームファクトリーの蓄積リング、稀少RIリングにおいてビーム実験を行い、不安定核の蓄積に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はショットキーピックアップの試作機の完成を目指す。設計はほとんど最終に近いので、できるだけ早く確証を得て製作にかかりたい。その後オフライン試験を行い、可能なら(ビームタイムスケジュールにうまくフィットすれば)ビーム試験を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ショットキーピックアップを製作しなかった分の予算が余っているが、H30年度に執行予定である。
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