研究課題
理研の線形加速器の大強度ビームと気体充填型反跳分離装置GARISを用いた10年以上にもおよぶ長期実験において、原子番号113番元素が合成され、ニホニウムと命名されるに至った。本研究は、次世代の新元素の識別方法として、蓄積リングに新元素を蓄積し、ショットキーピックアップ法によって新元素を1個から確実に識別する方法を提案する。蓄積リングに新元素を蓄積、周回させられれば、たとえ短寿命のうちにアルファ崩壊しても、アルファ粒子と娘核をそれぞれ同時に識別できるため、親核を一義的に同定することができる。あるいはアルファ粒子を検出しなくとも親核、娘核、孫核と原子番号と質量数を精密に決定できるため、どのような反応と崩壊が起こったか一義的に同定することができる。ショットキーピックアップは1粒子に感度をもち、周回粒子の質量電荷比に比例する周回周波数を与える。したがって、バックグラウンド粒子を気にすることなく1粒子から粒子識別が可能となる。本研究は、この新しい方法を実現に近づけるために、まずショットキーピックアップのフィージビリティスタディを行うことを目的としている。本年度は、前年度から行っていた3次元電磁場シミュレーションを完成させ、新しいショットキーピックアップのプロトタイプを設計、製作、オフライン試験を行った。理研の蓄積リングに導入されているショットキーピックアップの性能を上回る必要があるため、誘導電磁場のロスとなるセラミック部分を排除した新しい設計を採用した。オフライン試験の結果、現在我々が持っているショットキーピックアップと比べ、約10倍の信号強度が得られることが分かった。これは計算上、陽子1個を1.5秒で識別することができることになり、新元素の識別にも十分使用できる性能である。
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10.1016/j.physletb.2018.04.009