研究課題/領域番号 |
16K13800
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
駒宮 幸男 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80126060)
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研究分担者 |
神谷 好郎 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (90434323)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超冷中性子 / 未知短距離力 / 重力 / 量子力学 |
研究実績の概要 |
100 nm 程度の波長領域の中性子を超冷中性子と言う。地球重力場の下で束縛することができ、その基本スケールは数ミクロンオーダーである。束縛分布には特徴的な変調構造があり、また重力とのみ相互作用することから、重力検証実験の新しいプローブとして活用することが可能であると考えられる。本研究課題では、この量子束縛状態を用いて、重力に準ずる新しい相互作用の探索を目指す。 空間の余剰次元理論などから示唆される新物理が存在した場合、その構造のスケール付近において、ニュートン重力の逆二乗則は修正を受けると考えられる。これまで、いくつもの研究機関において、様々なスケールでの逆二乗則の検証実験が行われてきたが、未だ、50 μm を切った短距離スケールにおいて、重力を超えた強度での新物理の可能性は排除されていない。本研究は、1 μm スケールの新物理へ感度を持つ実験手法を開発することを目的とし、このスケールにおける初めての微視的方法での新物理探索を目指す。 本年度は、超冷中性子用のピクセル検出器開発を最も重要なものと位置付けて精力的に開発を進めてきた。まずは、DEPFET 素子の応答を見るべく、先日 Max-Planck Institute から送られてきたサンプル素子を用いて電荷収集の試験環境を構築した。その後、様々なエネルギーのアルファ線を素子の表面/裏面から照射し、電荷密度が高い状況における電荷のドリフトを測定した。同時に、Geant4 による検出器モデルを開発した。 現在、私たちの手元にある通常の MIP 測定用の DEPFET 素子サンプルでは、アルファ線によるすべてのエネルギー損失を受け止めきれない。事前の計算で予想されたもので、電荷のオーバーフローに対する応答とその限界について調べることができる。測定結果を基にして、検出器表面にいくつかのモデレータを設置し、それぞれの応答について検討した。また、読み出し回路の調整点について議論してきた。 これらの結果や実験の概要について、国内外の会議において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中性子検出器として予定していた DEPFET 素子の製造が遅れており、センサー試験で使用するサンプルを十分な数で確保できていない。そのため、まずは、パラメータの調整を施していない現行サンプルを用いて、アルファ線による電荷拡散の試験を進めることとした。当初予定していた、10Bの蒸着による影響や他、中性子への応答試験にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
アルファ線による電荷拡散の試験を引き続き進め、現行サンプルにおける拡散速度のバイアス依存性、運用温度依存性を測定する。その上で、ゲインや漏れ電荷の処理について読み出し回路を調整し、本研究課題での使用可能性について明確な答えを出す。 DEPFET 素子の試験と同時に、pnCCD 素子の可能性についても検討することとした。この素子も、DEPFET と同じく Max-Planck Institute で開発してきたもので、製造ラインの状況が、DEPFET に比べるとタイトでなく、開発の時間でいくぶんアドバンテージがある。読み出し速さや読み出しノイズは、本研究課題からの要請をクリアできると見積られているが、十分な安全ファクターがあるとは言えず、今後実測において、慎重に検討していく。 検出器の開発が済んだ後に、中性子ガイドの開発に進む。
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