100 nm 程度の波長領域の中性子を超冷中性子と言う。地球重力場の下で束縛することができ、その基本スケールは数ミクロンオーダーである。束縛分布には特徴的な変調構造があり、また重力とのみ相互作用することから、重力検証実験の新しいプローブとして活用することが可能であると考えられる。本研究課題では、この量子束縛状態を用いて、重力に準ずる新しい相互作用の探索を目指した。 空間の余剰次元理論などから示唆される新物理が存在した場合、その構造のスケール付近において、ニュートン重力の逆二乗則は修正を受けると考えられる。これまで、いくつもの研究機関において、様々なスケールでの逆二乗則の検証実験が行われてきたが、未だ、50 μm を切った短距離スケールにおいて、重力を超えた強度での新物理の可能性は排除されていない。本研究は、1 μm スケールの新物理へ感度を持つ実験手法を開発することを目的とし、このスケールにおける初めての微視的方法での新物理探索を目指した。
中性子の量子束縛状態を切り出す中性子ガイドのモデルを検討するため、異なる面精度の反射板に対する全反射の率と拡散状況を測定した。また実験結果を基に、中性子ガイドの設計を行った。その結果、超冷中性子の束縛状態に見られる変調構造のコントラスト向上が期待され、1 μm スケールの新物理への探索感度を改善する可能性が確認された。
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