本研究は、標準模型における重要な問題である強いCP問題および宇宙の暗黒物質問題を解決しうる新たな粒子であるaxionを研究対象にし、特に、現在の宇宙論から示唆される一方、検出技術の観点から観測が非常に困難な0.1meV前後の質量領域における新たなアクシオン探索法の研究を主要テーマとしている。 本研究において、ジョセフソン超伝導素子におけるクーパー対とアクシオンとの量子干渉に着目した研究を進めてきた。最初のプロトタイプのジョセフソン接合素子として、Nb/Al/NbのS/N/S型デバイスを作成し、I-V特性の測定を進めてきたが、ノイズレベルが非常に高いということ、並びに測定系においても十分な低温にできないという問題で目指す測定レベルには到達しなかったが、アンドレーフ反射の応答は観測でき、測定に関する課題が明確化された。また、産総研の研究者との連携を作ることができ、トポロジカル絶縁体を用いた接合において低ノイズ化が実現できそうであることがわかり、新たなデバイス研究の提案をすることができた。その一方で、理論研究も進めており、アクシオンとクーパー対との相互作用をファインマンダイアグラムレベルで記述できそうであることがわかり、さらに、マクロコヒーレンス効果を考慮することにより、現実的な観測が可能になる新たな現象論的アイディアを提案することができた。さらに、ジョセフソン接合のみならず交流電流との干渉効果も実際の数値計算から可能であることがわかり、新たな観測法の原理提案を行うことができた。 これら一連の研究活動から、産総研、理研、東北大等のさまざまな研究者との連携が拡大し、より本格的な理論・実験研究の土台を作ることができた。
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