研究課題/領域番号 |
16K13805
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
舟橋 春彦 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (00283581)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アクシオン / ダークマター / リドベルグ原子 / 光イオン化 |
研究実績の概要 |
宇宙におけるダークマターの有力候補素粒子アクシオンを、その質量の広い範囲に渡って一括して同時に探索する方法を開発する。この目的達成のために、リドベルグ原子の直接光イオン化過程を利用する。まず時間的・空間的にバンチ化したアルカリ原子ビームを、レーザー冷却・圧縮・加速過程により生成し、その後2段階レーザー励起によりバンチ化したリドベルグ原子を生成する。極低温に冷却した金属容器内にこのリドベルグ原子ビームを導入し、高磁場中でアクシオンが転換されて発生した光子を吸収してイオン化(光イオン化過程)されることにより、生成される電子を検出する。光イオン化の特性から、広い質量領域に渡ってイオン化が可能であり、従ってアクシオンを一括して探索することが可能になる。 現在までに、バンチ化装置を超高真空系を用いて製作し、その特性・性能を現在詳しく評価している。特に、高輝度のバンチ化原子ビームを得ることが、探索実験の効率を上げるためには必須であり、レーザーによる原子ビームの圧縮・連続速度分布を持つ原子ビームの一定速度への加速・その後の回転ディスクによる速度選別の各過程が重要である。当初の目標に合った性能を持つ原子ビームを得つつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
超高真空系によりバンチ化した原子ビーム生成装置を製作し、高輝度バンチ化原子ビームの生成に必要な磁場の発生・その特性測定や真空テストを行った。次に、半導体レーザー系を用いて、原子ビームの横方向圧縮、原子源からの連続速度分布を持つ原子の一定速度までの加速、その後の横方向再圧縮と、速度選別回転ディスクによるバンチ化を行って、バンチ化ビームを生成し、現在その性能を評価している段階である。この間、当初使用を予定していた実験室が使用不可になったことなどの諸事情により、実験の実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
バンチ化装置系を完成させた上で、レーザーの2段階励起によりリドベルグ原子ビームのバンチ化を達成する。このビーム系の性能を評価して、所定の性能が得られていることを確認する。その後、極低温に冷却したアクシオン探索装置にバンチ化ビーム系を組み込み、光イオン化過程による光子の検出を行う。種々の条件下で光子検出の効率を評価し、目的とする探索実験の高い検出効率が得られるようにする。必要な場合には改良を行う。この結果得られた高効率装置を用いて、典型的な温度での黒体輻射の測定を行い、探索実験装置の基本的な全体特性を確認し、その上で、実際に探索実験に進む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に述べたように、当初予定していた実験室が使用不可になった為に、研究が遅れた。この為に、予定していた消耗品などの購入による支出が出来なくなり、次年度への持ち越しを行うことになった。平成30年度は、研究を進展させて遅れを取り戻す予定であり、この進展に応じて、持ち越した資金を活用する。資金は、主として実験室の借料と消耗品の購入などに充てる予定である。
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