研究課題/領域番号 |
16K13808
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐甲 博之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (40282298)
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研究分担者 |
大山 健 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (10749047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | J-PARC / 重イオン衝突実験 / トリガレスデータ収集系 / ソフトウエアトリガ |
研究実績の概要 |
今年度はハイデルベルク大学と共同で、ALICE実験のTPC検出器におけるデータ収集FPGAボード(CRU)におけるFPGA上のゼロサプレッション、コモンモードノイズ除去、クラスタリング等のデータ処理を行う基本ロジックのファームウエア開発をほぼ完成させ、さらにCERNにおいてCRU実機におけるデータ読み出し試験にも成功した。 CRUのハードウエアに関しては2018年夏に生産を完了し、本研究用に1台入手できる予定であったが、電源ライン回路に不具合が発生し、その対策のために、完成時期が2019年度始めに遅れることとなった。これにより、2018年度に予定していたCRUを用いたデータ収集系の実用化に向けた試験を2019年度に変更する必要が発生した。 一方、J-PARC重イオン計画における重イオン衝突実験スペクトロメーターの設計と性能評価を更に進めた。昨年度に基本設計を行った超伝導ダイポール磁石、シリコンピクセル検出器、タイムプロジェクションチェンバー、ミューオン飛跡検出器等から構成される大立体角スペクトロメーターの設計を進めた。更にGEANT4によるシミュレーションを行い、TPCのエネルギー損失と飛行時間測定による荷電粒子の識別性能、フロー測定のための事象平面分解能の評価、ダイミューオン測定用セットアップにおけるミューオン対の不変質量分布を評価した。これらのためにシミュレーションコードと飛跡解析コードを開発し、ソフトウエアトリガ試験のための基本ツールを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ALICE実験のトリガレスデータ収集に対応したデータ収集FPGAボード(CRU)については、FPGAファームウエアの開発がほぼ完了したが、ハードウエア製作が遅れているため、購入がまだできていない。このCRUについては、2019年度初めに購入し、それを用いた高速データ収集試験を行う予定である。また、オンライン事象選択トリガーに関しては、今年度は高密度物質生成事象の選択方法を確立することに集中し、そのために時間がかかった。今年度、理論モデルの研究によって、全荷電粒子の横運動量の和が最も高密度物質事象の選択に適していることを見出した。2019年度には、この事象選択方法に基づいたオンライン事象選択トリガー法を開発し、その試験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、ALICE実験用CRUを導入し、トリガレス連続読み出し高速データ収集系を構築し、データ収集の試験と速度の評価を行う。さらに、ソフトウエアトリガーとして、重イオン衝突シミュレーションデータを模擬オンラインデータとして高速解析し、荷電粒子数や荷電粒子の横運動量の和等による事象選択を行うソフトウエアを開発し、オンラインソフトウエアトリガーの試験を行う。CRUとソフトウエアトリガを組み合わせた総合試験を行う。もしCRUの導入が来年度前半に間に合わない場合は、同等の性能を持つFPGAボードによる上記の試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題ではデータ収集FPGAボード(CRU)を開発しており、2018年夏に完成する予定だったが、電源ライン回路に不具合が発生し、対策が必要となり、完成時期が2019年度に遅れることとなった。これにより、2018度に予定していたCRUを用いたデータ収集系の実用化に向けた実験は2019年度に行い、CRU開発と実験に係る費用等に使用する。
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