研究課題/領域番号 |
16K13809
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
小栗 秀悟 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 学術振興会特別研究員 (20751176)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 宇宙素粒子 / 暗黒物質 / 暗黒光子 |
研究実績の概要 |
本研究は、暗黒物質の候補である、"暗黒光子"の探索実験を目的としている。電波望遠鏡を流用することで、スピーディに最先端の探索実験を行うことを計画している。 当初の計画では、CMB偏光観測用の電波望遠鏡GroundBIRDのみを用いて探索実験を行う予定であったが、これとは別の観測装置を利用できる機会があったので、少し先取りして暗黒光子探索を行った。利用した装置は、開発中の高感度ミリ波分光観測器"KUMODeS"で、本来は上空の水蒸気量を精密測定して突発的気象災害の予報を実現する装置である。すでにプロトタイプ装置が完成している。申請者は、学生を指導する形で、KUMODeSを用いた暗黒光子探索を行った。 探索した暗黒光子の質量は1e-4eV付近である。この領域内で、既存の暗黒物質として許されているリミットを1/5程度まで更新する予定である。現在、測定結果をまとめており、近日中に論文としてまとめる予定である。今回は、KUMODeSの利用時間の関係上、狭い質量領域のみでの測定になったが、原理的にもっと広い質量領域の観測も容易である。また、検出感度を高めるための大きなミラーを用いた観測も計画している。 並行して、GroundBIRDの開発も進めている。検出器開発で作成装置の故障によるトラブルもあったが、概ね順調に進んでいる。超伝導検出器開発はすでに再開しており、数ヶ月以内に完成の予定である。その他の望遠鏡開発は一通り完了している。今後は暗黒光子探索のための偏光板の作成に着手する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたGroundBIRDによる実験に加え、KUMODeSによる探索実験を実現した。すでに暗黒光子探索で新たなリミットを引ける状況にきており、大きな快挙と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、作成装置の故障で生じた遅れを取り戻す。超伝導検出器の開発にひと段落をつけたのち、それに対応する偏向板の作成を行う。望遠鏡のその他の部分は順調に進んでいるため、暗黒光子探索までスムーズに実現できると信じている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の後半、超伝導検出器を作成するための露光装置「ステッパー」が故障し、計画の遅れが生じている。ステッパーは、天文台にある装置で、共同利用の枠組みで使用させていただいていたが、装置のHDDが故障し、内部のパラメータが一度消失してしまった。その後、HDDのサルベージ作業を行いデータは復旧したが、それに約半年を費やした。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在は装置も復旧し、開発を継続している。今後は、検出器の開発した段階で暗黒光子探索に移行する。具体的には、望遠鏡の窓の上に設置する偏向板の作成に着手する。
|