研究課題
電子強誘電性を示す有機伝導体α-(ET)2I3と(TMTTF)2X(X=AsF6,PF6, SbF6)の光強電場による効果を調べている。本年度は特に、1これらの物質における)空間反転対称性の破れによるTHz発生の素過程の解明と、2テラヘルツ発生顕微鏡の作製、およびそれを用いた、強誘電ドメインと、ドメイン壁の構造の観察を行った。基底状態における強誘電ドメイン構造の空間スケール、ドメイン壁の異方性、熱履歴、光励起による変化などを調べた。まず1では、二次元有機伝導体(α-(ET)2I3)において、THz発生のスペクトルが、強励励起の変化によって変調される(強励起下において先鋭化)を示すことを明らかにした。また、この先鋭化が、THz発生用の基本波パルスによる光誘起絶縁体-金属転移のダイナミックな効果であることを明らかにした。(Appl. Phys. Lett. 112, 093302 (2018).)2では、擬一次元有機伝導体(TMTTF)2Xにおいて、強誘電ドメイン構造が、数百ミクロンの及ぶ巨大なドメインからなることをはじめて明らかにした。さらに、分極の向きの異なるドメインを隔てるドメイン壁は、多数存在する一次元鎖に平行なものは、15um (分解能は5 um)であり、非平行なものも(数は少ないものの)存在し、その幅は80 umもある。これまでAFMなどで観測された強誘電ドメイン壁の多くはナノメートルサイズであり、今回観観測されたものはそれよりも遥かに大きな空間スケール持つ。このことは強誘電性の主な起源である電子的な相互作用だけではなく、アニオンを含むさまざまな格子変位の寄与が予想される。さらに、光照射によるドメイン構造の変化や、光誘起ドメイン壁も観測した。光誘起ドメイ壁は、定常状態とは大きく異なる特徴を示した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 11件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Appl. Phys. Lett.
巻: 112 ページ: 093302-1-5
10.1063/1.4995798
Phys. Rev. B
巻: 95 ページ: 201105-1-5
10.1103/PhysRevB.95.20110
http://femto.phys.tohoku.ac.jp/