前年度に製作した放射光白色X線から波長分散集束X線ビームを生成する湾曲結晶ポリクロメーターの評価を行った。厚さ0.05mmと0.1mmのシリコン分光結晶を用いて水平方向の集光サイズを評価したところ、前者はX線ビームの半分程度を試料位置で全半値幅で0.1mmまで集光できるとこを確認したが、残り半分ほどのX線ビームは薄い結晶を湾曲させることにより生じた結晶のシワにより、1点に集光することができなかった。他方、厚さ0.1mmのシリコン結晶においてはシワの影響が小さく、X線ビームのほぼ全体を1点に集束することができた。集光サイズは全半値幅で0.15mm程度であった。目標としていた0.1mmに不足するものの、改良前の0.5mmから大きく改善され、実験に大きな支障のない値まで集光することに成功した。縦方向のビームサイズ縮小化は、スリットによってX線を0.1mmに切り出すことで行った。この波長分散集束X線ビームを用いて、半導体超格子薄膜試料について逆格子マッピング測定を行った。試料の面内角度を角度ステップ4°で走査しながら、X線散乱パターンを50枚、各1秒で取得した。50枚全ての画像を用いてデータ処理した結果、試料の面内異方性を反映する3次元逆空間マップを得ることに成功した。データ処理に用いる画像の数を減らしながら逆空間マップを作成した結果、10枚以下では試料の面内異方性を正しく再生することが難しいことが分かった。この原因は、X線ビームサイズが2次元検出器のピクセルサイズと同程度なため、隣接ピクセルに複数の散乱ベクトルのX線が入ったためである。この影響を補正する測定法の改良や解析法の開発が課題として残った。また、本研究によって高度化した波長分散集束X線ビームにより、X線散乱実験が高効率化され、界面構造のその場観察実験の高速化に繋がった。
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