テラヘルツ周波数帯域の光パルスを生成するためのベクトル波形整形技術を構築したのち、GaP(111)結晶を用いた円偏光テラヘルツパルス変換システムを完成させた。テラヘルツ波は水蒸気による吸収を避けるため全て窒素雰囲気を通過させ、EOサンプリングの系に導き最大500 V/cmの電場強度を持つことを確認した。 簡易的な実験として、このテラヘルツ波をオシロスコープのブラウン管内の電子線に照射し、軌道の変化をモニターの蛍光から目視で確認したが特に変化は見られなかった。やはり当初から予想していた通りテラヘルツ透過窓と1電子検出のためのマルチチャンネルプレートの導入は必須であることが確認された。 前年から引き続き、テラヘルツ透過窓、角度分解検出機構を有するマルチチャンネルプレート、有効磁場決定のためのマグネットを備えた真空チャンバーを構築し完成させた。この装置によりテラヘルツ波を減衰させることなく電子線に照射することができ、円偏光テラヘルツ波によって軌道を変化させられた1電子の検出が可能となる。 またこの実験に関連しベクトル波形整形技術を用いて、円偏光テラヘルツパルスに変換する前段階の偏光方向がテラヘルツ周波数で回転するパルスを半導体中の伝導電子に対し照射する実験を実施した。この実験において半導体を流れる電流の軌道が照射するパルスの偏光回転方向によって反転する様子が確認され、この波形整形パルスのヘリシティ操作が伝導電子の軌道を決定する能力を持つことが確認された。
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