研究課題/領域番号 |
16K13821
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芦田 昌明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60240818)
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研究分担者 |
田中 秀和 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80294130)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カソードルミネッセンス / 走査電子顕微鏡 / 相転移 / エネルギー移動 |
研究実績の概要 |
伝導特性など通常の電子顕微鏡では観測できない物性を高い空間分解能で可視化することを目指した蛍光体アシストカソードルミネッセンス走査型電子顕微鏡を開発することを目的として、実験を進めてきた。 本計画では、試料表面に色素などの発光体を塗布し、その発光層と試料界面でのエネルギー移動を利用することで非発光の物質の物性分布を可視化するという、新たな光プローブ法を提案している。今年度は、エネルギー移動によってカソードルミネッセンスが受ける影響の機構解明に取り組んだ。評価用試料として絶縁体基板MgO上にフォトリソグラフィーにより金をパターニングし、発光体として蛍光色素ローダミン6G(R6G)を真空蒸着法により膜厚を制御して堆積させた。その試料からのカソードルミネッセンスを走査電子顕微鏡を用いてマッピングし、被測定試料と発光体間のエネルギー移動効率を反映して変化したカソードルミネッセンススペクトルを取得した。その強度分布から発光体と試料界面のエネルギートランスファー効率分布を得ることに成功し、エネルギー移動を利用することで観察対象試料の伝導分布の可視化ができることを実証した。また、その発光強度と電子線強度、色素膜厚、および色素と被測定物質の光学定数との相関を調べたところ、従来のエネルギートランスファー理論では記述できないが、光学定数に依存した発光強度の変化、発光層の膜厚増加によるエネルギートランスファー効率の低下など、整合した傾向がみられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属と発光体の界面では、絶縁体と発光体の界面に比べてエネルギートランスファー効率が高いという、光励起下の発光測定結果と一致する結果をカソードルミネッセンスにおいても得ることに成功した。これは、走査電子顕微鏡を用いることで、高い空間分解能を有しながら、エネルギー移動を利用することで非発光体でも伝導特性の可視化ができることを実証したことに相当し、本研究の原理検証を終えたものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
原理検証を終えた本手法の空間分解能評価のために、ナノインプリントリソグラフィーでパターン化した試料を作製し、実際にナノスケールにおける電気伝導特性評価に展開する。さらに、信号の増強や空間分解能向上に最適な色素の探索も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
液体ヘリウムを用いた低温実験を翌年度にまとめて行う計画に変更したため、寒剤費を翌年度に繰り越すこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
液体ヘリウムを多用する低温実験を推進し、低温化によるカソードルミネッセンス発光効率の増強を図ると共に、被測定物質の温度相転移現象の観測などを行う。
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