研究代表者が先に見出した,フォトニック結晶のΓ点上の光ディラックコーンについて解析を進めた。特に,回折損のある2次元スラブ型フォトニック結晶の場合について,k・p摂動法で導出した,非エルミート有効ハミルトニアンに基づく解析計算と,有限要素法による数値計算とで,特異な分散曲線の形成や例外点近傍における光の群速度の発散などを詳しく調べた。さらに,SOI(silicon on insulator)ウェハの電子ビームリソグラフィ加工により,格子定数が約2.3μm,大きさが3ミリ角の空洞円柱正方格子フォトニック結晶スラブを実際に作製して,赤外領域の光ディラックコーンを実現した。Γ点上の光ディラックコーンの形成は,角度分解反射スペクトル測定で確認できた。その際,固有モードの対称性による反射ピーク生成の選択則を入射方位と偏光について導出し,実測データで確認した。特に,Γ点上では点群C4vのE対称モード以外の固有モードが反射測定で不活性であることを実測で確認できた。さらに,有限要素法を用いて反射スペクトルを算出し,実測データを忠実に再現することができた。 これらの研究成果について,第10回ナノフォトニクス国際会議(2017年7月,ブラジル・レシフェ開催)で“Photonic Dirac cones and relevant physics”と題して基調講演を行い,また,近刊の“Electromagnetic Metamaterials”(迫田和彰編,シュプリンガー社)で解説を執筆するなど,研究成果の普及にも努めた。
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