研究課題
本研究は高いキャリア易動度を持つ有機半導体単結晶と高発光量子収率の有機半導体単結晶の二層構造からなる新しい構造の有機発光電界効果トランジスタ(FET)を開発し、従来の有機発光FETより高い光量子束密度の実現を目的とする。有機発光FETは電流励起レーザー実現のための素子構造として期待されているが、そのために必要な易動度と発光量子収率を両立させる有機半導体材料を開発することは困難である。そこで、伝導と発光を別の材料に担わせることにより、この課題を克服する。電流励起レーザー実現のためのブレークスルーとなるだけでなく、有機半導体内でのキャリアや励起子のダイナミクスについて深い理解が得られると期待される。今年度は、キャリア輸送層及び発光層のそれぞれの材料探索を行った。キャリア輸送層としては、テトラセンおよびルブレンの単結晶が易動度が高く励起子の拡散長が長く、目的に適していることが電界効果トランジスタ特性の解析による易動度測定および光励起による拡散長測定から明らかになった。発光層の材料の開発では、物理気相輸送法でテトラセン分子と色素分子を同時に昇華・再結晶させることにより色素分子をテトラセン単結晶中に分散させることに成功した。色素を分散させたテトラセン単結晶の発光スペクトルは純粋なテトラセン単結晶から大きく変化しており、色素分子から高効率に発光が生じていることが分かった。色素分子の吸収スペクトルとテトラセンの発光スペクトルには大きな重なりがあり、テトラセンから色素分子への励起子移動と色素分子からの高効率発光が期待される。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画では、キャリア輸送層及び発光層の単結晶作製、キャリア輸送層の励起子拡散長の測定、発光層の発光効率の測定の3点を目標に掲げており、それらのすべてを達成することができたため。
最終年度では、初年度に開発した有機半導体材料を用いて、実際に機能分離型有機単結晶発光電界効果トランジスタを作製し、その特性を評価する。また、想定通りに発光層から発光が起こった場合は、そのメカニズムが励起子移動によるものか、キャリア輸送層からの発効によるものかを明らかにする。
他にも研究費が採択され、予定していた「旅費」及び「その他」を他の研究費から支出したため。
研究をより効率的に進めるために、電気特性測定機器と周辺機器および光学部品を購入する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
Journal of Physical Chemistry C
巻: 121 ページ: 2364-2368
10.1021/acs.jpcc.6b10827
Advanced Materials
巻: 28 ページ: 10304-10310
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