研究実績の概要 |
有機電界効果トランジスタ(FET)はゲート電圧の符号により正孔も電子も伝導する両極性特性を示すことが多い。このとき、ゲート‐ソース電極間とゲート‐ドレイン電極間の電圧の符号を逆にとると、有機半導体内に静電的にp-i-n接合を形成でき,正孔と電子の同時注入・伝導が可能になる。さらに、有機半導体の高い発光量子収率を反映して電子・正孔再結合による発光が見られる場合も多く、これを利用した有機発光FETの開発が行なわれている。特に、有機発光FETは有機ELと比べて電流密度が大きく、再結合領域を電極から離せることから電流励起有機半導体レーザーの実現が期待されている。 研究代表者らも、そのために高い電界効果易動度と量子収率を両立させる有機発光FETの開発を行ってきた(Adv. Funct. Mater. 19, 1728 (2009); Appl. Phys. Lett. 97, 173301(2010); J. Mater. Chem. C 1, 4163 (2013); 他)。しかし、一般に有機半導体ではキャリア易動度と発光量子収率はトレードオフの関係にあり、両方が必要な電流励起レーザーの実現にはブレークスルーが必要となる。そのため、国内外のグループにより新しい有機半導体材料の開発が行われているが、突破口は開かれていない。 そこで、本研究ではキャリア輸送と発光を別々の有機半導体材料に担わせる機能分離型有機FETの開発を行った。その結果、二種類の有機半導体単結晶を貼り合わせた二層構造のトップコンタクト―ボトムゲート型FET構造により,下層半導体を正孔・電子が伝導し,再結合後励起子が三重項状態で上層半導体に拡散し,そこでフュージョン後発光する機能分離型素子の開発に成功した.
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